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蔵書検索

図書アラカルト 平成3年~平成7年

「図書アラカルト」は図書館に所蔵している本を、できるだけ多くの方に紹介するために、昭和56年4月から平成23年12月まで市報こだいらに連載していたものです。(市報未掲載分も収録)

テーマごとに図書館職員が選んだ一般書・児童書を紹介しています。

なお、内容は市報掲載(未掲載分については作成日)当時のものです。


冬休みに(平成2年12月20日号掲載)

冬休みは年末年始であわただしく、じっくり読書というわけにいかないかもしれません。でもこんな本ならぴったりです。

『おやつを食べながら読む本』

現代児童文学研究会編 偕成社

食いしん坊君におすすめします。ねじめ正一の詩「アイスクリーム」から始まって、たまごやき、おでんにからし・・・食べ物ずくしの上質のアンソロジーとなっています。『きょうはこの本読みたいな全8巻』のうちの1冊。他に「0点をとった日に読む本」など、その日の気分で楽しめる本ばかりです。

『百人一首をおぼえよう』

佐佐木幸綱編 さ・え・ら書房

和歌というと、解釈や文法で苦しんだ記憶をお持ちの方も多いことでしょう。この本は勉強の本ではありません。それぞれの歌が持つイメージの世界に焦点を当てて訳詩されています。何度も声を出して読んでみてください。きっとそこから音楽とイメージを感じとり、詩の楽しさを発見することができるでしょう。

『なぞなぞあそびうた』

角野栄子作 スズキコージ絵 のら書店

ことば遊びが楽しい、リズミカルな文とユニークな絵のなぞなぞの本です。お正月のこたつを囲んで、お父さんもお母さんも知らない新しいなぞなぞ遊びはいかがですか。ではひとつ挑戦してみましょう。
 おおさむ こわい
 こおりの きばが
 やねから さがる
おわかりですね。もしわからないときはどうぞ図書館へお尋ねください。

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恐竜の本(平成2年8月20日号掲載)

恐竜の謎について、低学年から高学年まで楽しめる本を紹介します。

『ヒサクニヒコ恐竜の研究1・2・3』

ヒサクニヒコ文・画 あかね書房

このシリーズは、1『恐竜はどうくらしていたか?』、2『恐竜はどうたたかったか?』、3『恐竜はなぜほろんだか?』の3部作となっています。1では、恐竜の研究が化石の復元から始まること、そして、推理力、想像力を働かせて、実体に迫っていく課程が、興味深く説明されています。はたして恐竜は、バカでノロマだったのでしょうか。2では、恐竜どうしの戦いを中心に、見を守るために進化をしていった恐竜や、生活の様子がおもしろく語られています。3は、なぜ滅んだのかの謎に挑戦しています。親しみやすいイラストも、たくさんはいっていて、子ども達の興味を引くことでしょう。

『日本の恐竜』

長谷川善和文 薮内正幸絵 福音館書店

恐竜というと、外国での発見が多いので、日本にはいなかったのではないか、と思ってしまいますが、10年ほど前から日本列島のあちこちで、恐竜の化石が発見されるようになりました。日本にも恐竜がいたという、うれしい証拠です。それに、かれらは、1匹だけ、あるいは1種類だけいたわけではないでしょうから、ほかの恐竜との共存や、闘いもあったことでしょう。想像がふくらんでくると、ワクワクしてくるではありませんか。

『恐竜ライブラリー 全4巻』

アンジェラ・シーハン文 佑学社

子ども達に人気の高い恐竜を、主人公にした物語です。順に書名をあげますと、『プロントサウルス』、『ステゴサウルス』、『ティラノサウルス』、『トリケラトプス』の4巻です。絵は、写実的でしっかりしており、絵の流れだけでも、その恐竜の特徴、暮らし方などがわかり、恐竜に興味のある子なら、幼い子でも楽しめるものになっています。

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もうすぐ1年生(平成2年3月20日号掲載)

入学の春を迎え、小学校に行くのが待ち遠しい人、そして、ちょっぴり心配な人もいるでしょう。今回は、1年生のお友だちや小学校が舞台となっている本を紹介します。さて、1年生くらいの子どもにとって自分ひとりで本を読むというのは大変なことです。字を読むことに気をとられ、話の内容を楽しむ余裕がないことが多いものです。「自分で読みなさい」と言わないで、はじめはお父さんやお母さんが読んであげるように心がけるとよいでしょう。

『ぼく字がかけるよ』

ランデル作 偕成社

子ねずみのジョンは1年生の教室の隅で、お弁当のおこぼれを食べて暮らしています。ある日のこと、子どもたちの「ジョン」と呼ぶ声に出て行くと、それはねずみのジョンを呼んでいたのではなく、字の勉強をしていたのでした。そこで子ねずみも字を覚えようと決心しますが・・・。子ねずみジョンのほほえましい話です。皆さんの教室にもこんな子ねずみがいるかもしれませんね。

『こぶたのプーと青いはた』

スティーブンス作 岩崎書店

こぶたのプーは学校は大すきでしたが、体育は大の苦手です。でんぐり返しも、ボール投げもうまくできません。走るとおなかが痛くなってしまいます。けれども“はたとりきょうそう”のとき、仲よしのラクーンがプーにささやきました。「あんたがはたをとってくるのよ」、プーは走り出しました。そして・・・。子どもにはそれぞれ苦手があります。しかし、友だちの温かい励ましを受けて、それを克服していくのです。

『一年一組せんせいあのね』

鹿島和夫編 理論社

これは、1年生の子ども一人ひとりと先生との対話ノート「あのね帳」から生まれた詩の本です。子どもたちの心の動きが伝わってくるようです。生き生きとした表情をとらえた写真も楽しめる本です。

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クスリに対する正しい知識を(平成2年2月20日号掲載)

かぜ一つひかない これが健康な生活の基本です。しかし、だれもが一度や二度体調を崩したり、医者にクスリをもらった経験はあることでしょう。そこで今回は、漢方薬を含めたクスリについて書かれている本を紹介します。

『医者からもらった薬がわかる本』

木村繁著 社会保険法規研究会(出版) 白馬出版(発売)

医者からもらった薬を安全にのむため、処方することが多い約4千種の内服薬について書かれています。薬の形・識別から会社マークと文字でコードを照会し、その薬の知識を知ることが簡単にできます。その薬が、どんな病気の治療に効くのか、また、薬のつくられた由来、副作用など使用上の注意も紹介されています。知識編だけでも十分に参考になる1冊です。

『漢方薬の選び方・使い方』

木下繁太朗著 土屋書店

より多くの人たちに、漢方薬について理解してもらうために書かれた本です。この本は、健康保険で使えるもの、その他のものを集め、初めての人にもわかるようにイラストをつけて解説しています。気になる症状や病名を索引で引くことにより、対応できる薬名を知ることができます。そして、その薬が自分に合うかどうか確認できるようになっています。一般の方だけでなく、専門家にも役立つ1冊でしょう。

『薬草博物誌』

安田齊著 東海大学出版会

四季の庭や野山、食卓とわたしたちの生活の中で身近にふれる植物の中から約130種の薬草を選び、その効き方、原産地や名前の由来、それぞれの植物にまつわる話題などをわかりやすく解説している本です。また、薬草による治療の一般的知識や歴史についても紹介しています。薬草に興味のある方、より正しい知識を持ちたい方に役立つ1冊でしょう。

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酒との上手なつきあい(平成1年12月20日号掲載)

めっきり冷え込みがきびしくなり、なにかと酒と接する機会も多くなる時節になりました。そこで今回は、酒の好きな方に勧める、「酒呑み」というタイトルのついた本を何冊か紹介します。

『酒呑みに献げる本』

山本容朗編 実業之日本社

6編の小説と22の随筆から成り立っています。太宰治をはじめ田辺聖子など、多くの著名人が登場、酒と食べ物について書かれたものを集めたものです。1章は酒による酔態、2章は知識、3章ではその心得という形にまとめています。酒好きの方が、酔うことの知識なり、心得を知る楽しい1冊です。

『酒飲みの肝臓学』

鵜沼直雄著 大和書房

医学博士であり、アルコール性肝臓病の研究に関しては日本ではトップクラスの著者が書いた本です。アルコール中毒について書いてある文章で、読者の心を晴れやかにするものはめったにないということから、この本では酒の弱点を知り、酒を見方にし、肝臓のことを心配しないで飲める方法を述べています。肝臓を悪くしないで、しかも酒をエンジョイしたい酒好きの方に勧める1冊です。

『酒呑みのまよい箸』

浅野陽著 文化出版局

酒が好きで、料理が好き、手料理で客をもてなし、いっしょに杯をかたむけるのを最上の喜びとする陶芸家が、酒のさかなと料理を語っている本です。どれも海山の幸を生かし、臨機応変に創り出された美味ばかりを集めています。280品もの、きわめつけの酒のさかなと、心楽しい話に恵まれた好著です。すばらしい料理とともに、親しい友人と酒を飲みながら一夕をともにしたい方に勧める1冊です。

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幼年文学 絵本からおはなしの本へ(平成元年11月20日号掲載)

絵本からそろそろ「おはなしの本」を読みはじめよう、という子どもたちのために楽しく読める本を紹介します。ちょっと難しいと思ったら、お父さんやお母さんが始めの何ページか読んであげるとよいでしょう。

『もりのへなそうる』

渡辺茂男作 福音館書店

子どもはみんな探検ごっこが大好きです。近くの林や原っぱも大森林や大草原になるのです。ある日、てつたくんとみつやくんはリュックサックをせおい、おべんとうを持って森の奥へ探検に出かけて大きなたまごを見つけます。次の日、2人はたまごから生まれた「へなそうる」と夕方まで遊びました。幼児の空想の世界を広げるお話です。てつたくんとみつやくんのお話が4つはいっています。

『ロッタちゃんのひっこし』

リンドグレーン作 偕成社

ロッタちゃんは、お気に入りのぬいぐるみがいじめられた夢を見て、朝からごきげんななめ。セーターがちくちくするといって切りきざんだあげく、ひっこみがつかなくなり隣のおばさんの家の物置きに引っ越しをします。お部屋を飾ってごきげんなロッタちゃんですが、夜になると・・・。小さい子どものやんちゃぶりと、それを見つめる大人たちの温かい姿を描いた愉快なお話です。

『ふらいぱんじいさん』

神沢利子作 あかね書房

ふらいぱんじいさんは、目玉焼きを焼くのが大好きでした。ところが、おくさんが新しい目玉焼きなべを買ったので、たまごを焼かせてもらえなくなりました。「おおきなめだまやきをやきたい!」と旅に出たふらいぱんじいさんですが、行く先々でたいへんな目にあいます。そしてとうとうふらいぱんじいさんは、小鳥たちのおじいさんになったのです。胸がわくわくするようなふらいぱんじいさんの冒険物語です。

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夏休みのおすすめ本(平成元年8月20日号掲載)

夏休みも残り少なくなってきました。海や山へ行ってきた人も多いことでしょう。自然に親しんだあとに、こんな本はいかがですか?夏休みに図書館のおすすめ本の中から紹介します。

『なつのかわ』

柿崎一馬著 福音館

かわ もりにうまれ、うみにむかう。この本の中の文章はこの1行のみ。霧けむる川の誕生から入道雲のわく夏の海に至るまで、川の美しい表情を写真で語りかける写真絵本です。夏の川が見せるさまざまな表情 木々の緑の彩を映す川面、水辺の子どもたちの川遊びの風景 に、あらためて日本の自然の豊かさに気がつくことでしょう。1枚1枚の写真は、自分がそこにたたずんでいるような気持ちにさせてくれます。幼い子どもたちから大人までが楽しめる川の本です。

『夏の星座』

藤井旭著 金の星社

天の川を見たことがある人は、どのくらいいるでしょう。夜空が明るい町の中では、星座を見つけるのもむずかしいですね。そんなときには、明るい星を手がかりにして見つけることができます。この本は、夏の代表的な星座の見つけかたをわかりやすく説明しています。また、「星の大きさくらべ」「星座のおこり」楽しい小読物(しょうよみもの)もあります。あなたもこの本を手にして夜空を眺めてみませんか?

『ブナの森は緑のダム』

太田威文・写真 あかね書房

遠い昔から人々は、ブナの森を天然の水がめと呼んで大切にしてきました。落葉の積み重なった地面は、雨水を吸い込んで地下水を貯えます。ブナの森から流れ出る川の水量は四季を通じて大きく変化することはありません。庄内平野の森の季節の移り変わりを写真で追い、土壌生物の役割、ブナの森に住むワシやタカを中心にした、“食物連鎖”なども、自然の森の豊かな恵みの中で成り立つことを強調しています。

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この夏は“マリーンスポーツ”をと考えている人へ(平成1年6月20日号掲載)

うっとおしい梅雨の季節となり、家に閉じこもりがちな人にとっては、早くも夏の到来を心待ちにしていることでしょう。その夏もあと1か月あまり。そこで今回は、夏を待ちきれない人のために、一足早くマリンスポーツの世界に関する本の一部を紹介します。

『マリーンスポーツのはなし』

関邦博他編 技報堂出版

アメリカズカップレースとは、将来もっとも速い競泳方法は何か、ダイビング・ライセンスを取るにはなど、いろいろな疑問に現在、活躍中のインストラクターが答えています。山や陸上では体験できない、海に関する一つひとつの「はなし」が30項目ほどあり、どこから読んでも7分以内で終わるようになっています。マリーンスポーツ、とは何か、また、どうすればよいのかなどを知るためには役立つでしょう。

『たのしいヨッティング』

小島敦夫著 小林則子著 成美堂出版

著者の数々の体験から書かれた本で、自分たちが知りたかったこと、体験してよかったことを、わかりやすくまとめています。第1章から第4章までで構成され、初めてヨットに乗ることから操船の基本を身につけるまでの過程に重点がおかれています。写真やイラストも多く使われ、巻末にはヨットの艇種リストやメーカーなども紹介されています。これから始める方の入門書としては最適でしょう。

『ボードセーリング』

浅野雅明作 西東社

数多くの生徒を見てきた著者が、まったくこのスポーツを知らない人にも理解できるように考え書かれた本です。基本からレース入門、上級セーリングと順を追って構成され、スムーズに上達できるよう配慮されています。また、豊富なイラストと写真も使われ、見ているだけでも興味のひかれる1冊です。

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学校・先生・友だち(平成元年5月20日号掲載)

新しい学年に進級した学校生活も、そろそろ軌道に乗ってくるころです。今回は学校生活が中心に描かれた本を紹介します。

『先生のつうしんぼ』

宮川ひろ作 偕成社

給食のにんじんを、食べずに捨てているのを見つけられた先生は、子どもたちに通信簿をつけられてしまいます。ある日、クラスで蚕(かいこ)を飼うことになり、やがて、学校を2周もする糸がとれました。先生と子どもたちの交流は、豊かで楽しく、小さなエピソードのひとつひとつに、作者の温かい目が注がれています。

『きみはダックス先生がきらいか』

灰谷健次郎作 大日本図書

4年1組の担任がダックス先生とわかって、クラスのみんなは絶望のため息をつきました。そのため息どおりの事が遠足、家庭訪問と続く行事でも、立証されることになってしまいます。けれども、日々の小さな出来事をきっかけにして、1日中ぼやっとしているようなダックス先生が、実は、子どもの本質を見きわめていてたことがわかってきます。人間の本当のやさしさとか、人間の心の痛みを知ることの大切さが、感動的な物語に込められています。

『ヴィーチャと学校友だち』

ノーソフ作 福井研介訳 岩波書店

ソビエトの学校物語です。算数の苦手なヴィーチャはどこにでもいるような男の子です。夏休みが終わって新学期が始まったばかりというのに、ヴィーチャは何となく気が重いのです。というのは、夏中、勉強のことなんか思い出しもしなかったからです。そんなヴィーチャですから、算数の宿題に四苦八苦。その奮闘ぶりは、まさしく子どもの気持ちにピッタリで、思わず「そうだ、そうだ」と、うなずいてしまいます。このヴィーチャを主人公に、クラスで成績を高めていく話を軸にしながら、犬に芸をしこむ話や、ピオネールの課外活動も含めて、楽しい学校生活が描かれています。

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植物の生活を知ろう(平成1年4月20日号掲載)

道端にひっそりと咲いている花。名前は知らなくても感動を覚えることがあります。しかし、その花の習慣や生活を知ることができたら、きっと今以上に楽しくなるはずです。そこで今回は、専門的知識がない方でも、植物に興味をいだくことのできる本を紹介します。

『花の歳時記 全8巻』

飯田龍太著 小学館

四季折々に咲く花、香る花を求め、全国各地を訪ね各巻数10点の写真で紹介しています。また、俳人、歌人、随筆家などによる花に関したエッセイと詩歌も収録されており旅心を誘われます。ほかには、花の見どころや見どき、知られざる花の名所まで紹介、旅のガイドブックとしても重宝されるのではないでしょうか。

『ほんとの植物観察』

室井綽著 地人書館

アジサイ、アサガオなど自然の中でごく普通に見られる植物をスケッチし、90点ほど載せています。そのスケッチの中から「うそ」と「ほんと」のものを見分けることで、草花に親しんでもらおうというユニークな本です。スケッチも鮮明に描かれており、絵としても興味がわくことでしょう。

『野の花・山の花大図鑑』

埴沙萠著 講談社

本来の図鑑は、調べたい草花や木が分類上何課のものかという、専門的な知識を必要としています。この図鑑は、単なる写真集だけではなく、まったく見当のつかない人でも引けるよう要所に工夫がされています。花を季節で分けたり、花びらの数、形、色で名前を調べることができます。よく似た仲間の植物についても、さらに詳しく比較できるように巻末に対照表がついています。花のほか、果実のコーナーもあり、図鑑としては楽しさをもった本とも言えるでしょう。

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愉快で楽しい本 小学3・4年生に(平成元年3月20日号掲載)

本って楽しくて面白いという発見があれば、子どもは読書が好きになるでしょう。それには、適切な本との出会いが大切です。読書離れが起こる3・4年生向きに楽しい本を取り上げました。

『小さなスプーンおばさん』

アルフ・プリョイセン作 大塚勇三訳 学習研究社

ノルウェーの片田舎、ふだんは気のやさしい亭主と静かに暮らしているおばさんが、ときと所構わずに、茶さじぐらいに小さくなってしまいます。そこから起こる珍事件の数々。けれどもこのスプーンおばさん、少しも慌てず「なるほど。スプーンみたいに小さくなったんなら、それでうまくやらなきゃならないわね」とまことに大らか。そして、持ち前の機知と、小さくなってるときは、動物とも話ができる不思議な力で、次々と困難を乗り切っていきます。奇抜な発想とユーモラスなストーリーが、子どもたちを物語の中に引き込んでしまいます。漫画風の挿絵もこの物語にピッタリです。

『トンカチと花将軍』

舟崎克彦・靖子作 福音館書店

ある日、突然姿を消してしまった花を探しに、トンカチは愛犬サヨナラと出かけますが、途中でサヨナラを見失ってしまいます。トンカチがあてもなくさまよっているうちに、おかしな世界へまぎれ込んでしまいます。そこで出会うのは、姓名判断をする水たまりのジャポチンスキー、くしゃみのとまらない将軍、ねこのヨジゲンなどと不可思議な人物ばかりです。このナンセンス・ファンタジーの世界を、遊びの心で理屈など考えずに楽しんでください。

『かしこいポリーとまぬけなおおかみ』

キャサリン・ストー作 佐藤凉子訳 金の星社

りこうなポリーと食い意地の張ったおおかみとの楽しい話が4編。その中のひとつ「ポリーずきんちゃん」は、おなじみグリムの「赤ずきん」をもとにしてあります。おおかみは、本と同じように事が運ぶと信じているので、森を通っておばあさんの所へ行くはずのポリーが、電車やバスで行ってしまうのであぜんとするばかりです。いつもは悪役のおおかみも、ここでは、小さな女の子のポリーにやりこめられるので、子どもたちはきっと痛快な気分で、ポリーに声援を送ることでしょう。

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健康を求めて走る人たちのために(平成1年2月20日号掲載)

“老いは足から”とよくいわれます。今、世界はランニングブームに沸いています。最近では、女子のマラソン熱まで高まり、盛んに競技が行われています。そこで今回は、健康を求めて走っている方に、数多くある本の中から何冊かを紹介します。

『再び奇跡のランニング』

ジェイムス F.フィックス著 一色真由美著 御影雅良訳 CBS・ソニー出版

「スポーツ科学が実証した走る健康法」という副題が示すとおり、米国スポーツ科学の最新情報を盛りこんで、心臓発作、栄養、具体的な走り方などをていねいに解説しています。アメリカで数百万部を売って大ベストセラーとなった「奇跡のランニング」の続編。

『ランニングワンポイント・コーチ』

山地啓司・山西哲郎・有吉正博著 大修館書店

ランニングの基礎知識、科学、技術、健康管理についてのさまざまな疑問に、20数年来ランナーを続けている3人の著者が答えています。1問1答式で、詳細でわかりやすく、特に初心者にとっては、最適な、走るための事典ともいえるでしょう。

『走れ!ミキ』

ゴーマン・美智子著 文藝春秋

女子マラソンの第1人者である著者が、生い立ち、渡米、結婚、走ることとの出会い、出産など、自分の前半生を語った本です。波乱に富み、淡々とした語りの中に自立する女性のみずみずしさ、強さが全編に流れていて読みごたえがある1冊でしょう。

『輝け!女子マラソン』

高橋進著 硯文社

女子マラソンの歴史を、ギリシャ時代にまでさかのぼってひもといています。世界的なレベルに達した日本の女子マラソンの歩みも追いながらマラソンの魅力を語っています。

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愛犬家、愛猫家にささげる1冊の本!(平成1年1月20日号掲載)

犬と猫は、昔から人との結びつきが深かった動物です。彼らの性質や習性を知れば、今以上に愛情がわくことでしょう。そこで、今回は犬と猫に関する数ある本の中から、いくつかを紹介します。

『人、イヌにあう』

コンラート・ローレンツ著 小原秀雄訳 至誠堂

人間とのつきあいで、生き方を徹底的に変えたイヌと、全く変えなかったネコの“種”の性格、心、世界を行動から理解するもので、彼らに注がれた著者の眼差しには優しさを感じることができるでしょう。

『犬と歩けば』

安岡章太郎著 読売新聞社

著者の壮年期をともに生きた愛犬コンタとの心の交流を描く。コンタへの愛情はもとよりコンタと過ごす日々を通して自分の人生を見ている。エッセイ集で文章の妙なども見逃せない1冊。

『高安犬物語』

戸川幸夫著 新潮社

山形地方に、ただ1匹純血を保つ高安犬で、著者が高校時代、調査・研究した記憶をもとに描いた本格的動物文学。犬のチンと猟師吉との荒削りでたくましい愛情を感じさせられる名作です。特に、ラストシーンには感動させられます。

『猫の文学散歩』

熊井明子著 集英社

チャンドラー、コレット、谷崎潤一郎、萩原朔太郎・・・と猫に魅せられた東西の作家たち数十人の猫物語を縦横に歩き回りながら、文学に登場する猫たちの魅力を解読したエッセイ集です。

『不思議の国の猫たち』

仁木悦子編 立風書房

芥川龍之介の「お富の貞操」、古今亭志ん生の「猫の皿」、水木しげるの「ねこ忍」など12のストーリーを集めたニャンソロジー。ミステリー、SF、落語、漫画などの世界で、ネコたちが大活躍します。

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冬の絵本(昭和63年12月20日号掲載)

寒い冬の日にこんな絵本はいかがでしょう。

『くんちゃんとふゆのパーティー』

ドロシー・マリノ作 ペンギン社

こぐまのくんちゃんは、まだ雪を見たことがありません。冬ごもりの近づいたある日、雪が降ってくんちゃんは雪ぐまを作って遊びます。「ゆきってすてきだね」と小鳥に声をかけますが、雪に覆われる冬に食べ物を見つけるのはたいへんと教えられます。そこで、くんちゃんは、小鳥たちにとてもすてきなパーティーをしてあげます。幼い読者は、無邪気なくんちゃんといっしょになって楽しむことができるでしょう。ペン画に赤で彩色されているだけのシンプルな絵が、素朴な森の生活を伝えてくれます。

『クリスマスだいすき』

ピーター・スピア作 講談社

もうすぐクリスマス。まちでは、もうクリスマスのかざりつけが始まっています。子どもたちの家でも準備を始めました。この家族の様子を追う90点もの絵が、人々のクリスマスを祝う気持ちの高まりを見事に描いています。スピア独特のカラフルな絵。細かな町の描写の中から、この一家を探すのも楽しみです。

『ふゆのはなし』

クライドルフ作 福音館書店

年よりの3人の小人(こびと)が、あの白雪姫と暮らした、いとこの7人の小人を訪ねることにしました。深い雪のなかを行く小人たちは、小鳥の歌に聞きほれたり、氷の精たちのスケートに見とれます。こうして7人の小人の家に着くと、そこには、白雪姫も客にきていました。白雪姫とのひとときのなんと楽しかったこと!心を残しながら白雪姫が、自分の城に帰って行き、話は終わります。幻想的で詩情豊かなヨーロッパの冬の風景を味わってください。クライドルフの石版画の落ち着いた色は、この話にぴったりです。

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グリム童話を絵本で(昭和63年11月5日号掲載)

グリム童話の「ねむりひめ」や「赤ずきん」を知らずに育ってしまう人は少ないでしょう。数々の美しい絵本が出版されています。グリムの世界を絵本で味わってみませんか。

『赤ずきん』

バナーディット・ワッツ絵 生野幸吉訳 岩波書店

グリム童話の中でも、とりわけよく知られているのが、この「赤ずきん」ではないでしょうか。これはグリムの原点から忠実に訳されたものです。ワッツは、素朴ないかにも子どもらしい赤ずきんを描き出しました。パステル画の明るい色彩は華やかで、森の花畑の美しさは特に印象的です。

『ねむりひめ』

フェリクス・ホフマン絵 瀬田貞二訳 福音館書店

祝宴に招かれなかったうらない女によって、のろいをかけられた姫は、十五歳になったとき、“つむ”に指を刺して、百年の眠りに落ちてしまいます。その間に、いばらが城を覆いつくしてしまうというこの物語は、神秘で劇的な魅力に満ちています。スイスの画家ホフマンは、余白を効果的に使い、人物を際立たせて物語の奥行きを出し、セピアとオリーブ、緑と青をきかせた色調は、気品を感じさせ、格調高い作品に仕上げています。

『白雪姫と7人の小人たち』

ナンシー・エコーム・バーカート絵 八木田宣子訳 冨山房

「肌は雪のように白く、ほっぺたは血のように赤く、髪の毛は黒檀のように黒い」と白雪姫は書き表されています。バーカートはリアリティのある画風で、この形容通りの美少女を創造しました。小人は愛らしく描かれるのが常でしたが、ここでは、本来の小人の持っている不気味さを含ませて表現しています。しかし、これは、最後にお妃(きさき)がまっ赤に焼けた鉄の上ぐつをはかされて、死ぬまで踊らされるという結末などを考えてみても、より、グリムの世界に近いものが感じられます。

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「詩」の楽しさを子どもたちへ(昭和63年8月20日号掲載)

大人は「詩」というと少々難解で高尚な芸術として敬遠しがちですが、子どもにとっては違います。小さいこどもたちは、リズミカルなことばのひびきが大好きです。新しいことばもすぐ覚えてしまいます。何気ない日常の遊びのなかで、聞き覚えた絵本や詩の一節を口ずさんでいる姿に気がついたことがあるでしょう。まだ自分で字を読めない幼児期から、お父さんやお母さんのような身近な人に楽しい詩やことばあそびの本を読んでもらえれば、それは、子どもにとってとてもうれしいことなのです。小学校2年生くらいまで、誌は声を出して読んであげたいものです。詩のことばとリズムは、声に出して初めて本当の味わいが生まれるといっても過言ではないでしょう。

『おさるがふねをかきました(しのえほん1)』

まど・みちお詩 東貞美絵 国土社

まどみちおの詩や童謡を知らずに大きくなる子どもはいないでしょう。「ぞうさん」「やぎさんゆうびん」などもこの詩人の作品としておなじみです。動物や植物をうたう詩には、ユーモアあふれる心温かさが感じられます。子どもの目の高さでとらえられたことばだからこそ子どもの共感を得られるのでしょう。

『のはらうたI・II・III』

くどうなおこ詩 童話屋

のはらむらの住人、かまきりりゅうじくん、かぜみつるくんたちの代理人となって書きとめたうたの本。小さな生きものたちのつぶやきが、自然の声が聞こえてきます。春・夏・秋・冬と、のはらむらをゆっくり通りすぎていく季節のうたは、こころのけしきです。のはらむらに、さんぽにでかけませんか。高学年への朗読も喜ばれるでしょう。

『ことばあそびうた』

谷川俊太郎詩 瀬川康男絵 福音館

この本は、ざん新なことばの宝庫です。思わず口ずさみたくなる、はぎれのよいリズムにあふれています。声に出してみると、目で文字を追ったときにはわからなかったおもしろさに気がつくことでしょう。絵も版画風で楽しい。

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科学読み物(昭和63年7月20日号掲載)

広大な宇宙のなぞや、身近な昆虫の知られざる顔、そして、過酷な条件下でもたくましい生命力を発揮する植物など、宇宙や自然の驚異は数知れずにあります。その一端を知る本を紹介します。

『子ども天文教室』

前川光著 大日本図書

宇宙には、まだまだ不思議なことがたくさんあります。UFOや宇宙人の話になると、どこまでが真実で、何を信じてよいのかわからないというのが本当のところですが、すべてを否定するというのも科学的ではありません。興味本位の類書の多い中、本書では、UFO宇宙人説にしても賛成派、反対派の両方のデータを取り上げ、考えるのは読者である子供にゆだねられています。

『蚊も時計を持っている』

千葉喜彦著 さ・え・ら書房

蚊はどうして動物をさすのでしょうか。それは血を吸うためです。その血は卵を育てるためなので、血を吸うのはメスだけです。蚊がきらわれるのは、この動物の血を吸う性質のためです。著者は、そのきらわれものの蚊を調べているうちに、面白いことに気がつきます。そのひとつは、家の軒先に立つ蚊ばしらです。これはどうもオスだけの集まりで、「およめさん」さがしのパーティらしいのです。蚊を調べるのは病源体を見つけたりするのに必要なことなのですが、こんな楽しい発見もあるのです。蚊に興味がわいてきませんか。

『植物たちの富士登山』

清水清文・写真 あかね書房

富士山は溶岩や砂れきにおおわれていますが、そんなところにも植物たちが点々としがみついています。植物にとって決して住みやすいとは言えない条件なのに、植物たちはまるで頂上をめざしているかのようです。カラマツは低地では垂直に伸びますが、高くなるにつれ旗を立てたように枝が片側によってしまったり、ついには地面をはってまで生きています。また観光道路による自然破壊についても触れ、今後の自然保護と緑化についての問題も明らかにされ、破壊された自然の回復の困難なことを改めて考えさせられます。

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たのしいおはなしの本(昭和63年5月20日号掲載)

今回は、図書館のおはなし室で、ふだん子どもたちに語っているお話がのっている本を紹介します。昔話を語ることが多いのですが、創作されたお話の中にも子どもたちがとても楽しんで聞くお話がたくさんあります。ぜひ、声に出して、子どもに読みきかせてあげましょう。

『おはなしのろうそく』

東京子ども図書館編・発行

現在16集まで発行されています。手のひら大のかわいらしいこの小冊子には、昔話や創作のお話、なぞなぞ、指あそびなど5~6篇づつ収められています。何ともとんちんかんなことをやらかす男の子のお話「エパミナンダス」(ろうそく1)、秋の日に村の子どもたちが風の神に連れられて不思議な体験をするという日本の昔話「風の神と子ども」(ろうそく9)などあまり知られていないお話もたくさんあります。

『ムギと王さま』

ファージョン作 石井桃子訳 岩波書店

70歳を過ぎた著者が、それまでに書いた子どものお話のうちから27編を自選した短編集です。この本には、昔話風なもの、寓話ふうなもの、子どもの現実生活を描いたものなど多彩な作品があふれています。どの作品にも不思議な美しさをもった世界が豊かに広がり、目をみはらせられます。よくお話として語られるのは、白や赤のバラを川に流して子どもを自分のバラ園へ呼ぶ「小さいお嬢様のバラ」、自然へあこがれがこめられた「ヤング・ケート」など。きれいなお話が多いので、おはなし会のあとに、3・4年生くらいの女の子が喜んで借りていく本の1冊です。中学生への朗読にもよいでしょう。

『くしゃみくしゃみ天のめぐみ』

松岡享子作 福音館

くしゃみやしゃっくりなどを題材にして、昔話風に描いた底抜けに明るくおかしい話が5篇集められています。ごはんのときどでかいおならをするくせのあるおじいさんが、殿様の前で、梅の香りのするおならをし幸福になる「梅の木村のおならじいさん」など。特に、男の子たちは大いに楽しむことうけあいです。

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子どもの本の情報誌の紹介(昭和63年4月20日号掲載)

子ども達にたくさんの良い本を読んでほしいと願うのは多くの大人に共通の思いです。それは取りも直さず大人が子どもの本に親しむということに通じるのではないでしょうか。そのような大人にとって子どもの本の書評誌、情報誌は子どもの本を幅広く知るには手頃な資料と言えましょう。

『子どもの本棚 月刊』

日本子どもの本研究会

数少ない子どもの本の月刊書評誌です。内容の中心になっているのは子どもの本研究会の選定による月別のリストであり、その中からさらに「今月の書評」として約20冊の本を取り上げています。書評は約2千字のもので単なる紹介だけではない突っ込んだ評価を行っています。さらに読書会の記録や児童文学に関する連載記事などが、その月々によって交互に掲載されています。4月号は昨年末亡くなった児童文学者の椋鳩十氏の追悼として特集しています。

『子どもと読書 月刊』

岩崎書店

「すべての子供に読書の喜びを!」という目標が雑誌の内容に反映されています。この雑誌の特色は、毎回特集記事を中心に据えているところにあります。3月号は「87年の子どもの本の動向」を主題別に分けて話題になった本などについて解説を試みています。また、4月号は新学期に進めたい1冊という特集で新学期にふさわしい図書の紹介が行なわれており、子どもの本に関心のある人はぜひ読んでほしい雑誌です。

『こどもの本 月刊』

日本児童図書出版協会

児童図書新刊情報誌と言えるもので全体の半分のページを新刊案内に当てています。ここには約40社の児童図書出版社から刊行された1か月の新刊書が対象年齢別に漏れなく収録されており、その1つ1つには簡単な解説が載せられています。その他の内容では、子どもの本にかかわる作家を取り上げた連載インタビュー「書く人描く人」などは作者の作品観、人間像を知る上で興味ある記事と言えましょう。

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新シリーズ紹介 おなじみの主人公が新しく(昭和63年3月20日号掲載)

いつの世にも子どもたちの身近にあって愛される本があります。そんな本たちの中で、最近、装いも新たに登場した三つのシリーズを紹介しましょう。それぞれ旧版のよさを生かしながら、美しく愛らしい装丁に生まれ変わりました。思わず手に取ってみたくなること請け合いです。これを機会に子どもたちにいっそう喜ばれ、読みつがれていくことでしょう。

『グランド・アルバム「ぞうのババール」シリーズ』

ブリュノフ作 矢川澄子訳 評論社

悪い狩人によって母親を失った子ぞうのババールは、町で勉強し成長します。そして、ぞうの国に王様として迎えられる第1巻「ぞうのババール」から、新しく翻訳された第6巻「さるのゼフィール」までの6冊が、原書どおりの超大型の絵本になりました。幼い子どもたちには一抱えもある大きさですが、明るい色彩が美しいこの絵本は、出版以来20年になる旧版にも増して、子どもたちの心をつかむことでしょう。

『リトル・グレイラビットシリーズ』

A・アトリー作 M・テンペスト絵 偕成社

うさぎのグレイラビットは、森のはずれの小さい家に住んでいます。この愛らしい絵本の中に、彼女と森の仲間たちとの心温まる日々が息づいています。旧版より挿絵の数もふえ、色彩も鮮明です。そして新訳による文は、より幼い子どもたちにわかりやすく、喜ばれることでしょう。「森のともだちとごちそうどろぼう」からはじまるこのシリーズは、全8巻。

『ミス・ビアンカシリーズ」』

M・シャープ作 渡辺茂男訳 岩波書店

白ねずみの貴婦人ミス・ビアンカ。「くらやみ城の冒険」では、捕らわれの詩人を救出すべく、仲間のバーナード、ニルスとともに危険な旅に出発します。息もつかせぬスリルとサスペンスは読者を引きつけてやみません。旧版の改訳に、待望の続編「オリエントの冒険」を加えての全5巻。以前より一回り小型でチャーミングな装丁のこの本は、高学年の子どもたちへのすてきな贈り物になります。

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山岳写真集(昭和63年2月20日号掲載)

一口に山と言っても、多くの山があり、また、山をテーマにした山岳写真集も最近数多く出版されています。今回はその中でも、長年、山岳写真を撮りつづけてきた代表的な山岳写真家の白籏史郎氏と白川義員氏の作品集を取り上げ紹介したいと思います。

『神々の原風景 白川義員作品集』

白川義員著 学習研究社

「三百万年の昔に地球上に現れた猿人が見たであろうこの惑星の感動的な原初の風景を、写真によって現代に紹介する」とあるように、絶えず手付かずの自然の風景を撮りつづけてきた白川氏の写真集です。アメリカ西部の雄大な風景を中心にしてアジアの山岳地域、ヨーロッパの自然など、人間の歴史をはるかに越える昔から続いた風景が幾つもの写真に収められています。「地球黎明」「神々の造形」「至福の大地」とつけられたテーマにまとめられた1枚1枚の作品は単なる風景写真の域を越え、圧倒的な迫力をもって見るものに迫ってくるようです。

『NEPAL HIMALAYA』

白籏史朗著 山と渓谷社

山岳写真を主に自然風物・風景写真を意欲的に撮り続けている写真家・白籏史郎氏の3年間にわたるネパール・ヒマラヤの取材撮影をまとめたものです。エベレストやマナスルなど世界の最高峰の山々から無名の山までを四季の変化の中で、丹念に百余枚の写真の中に収め解説を加えています。朝が明け始めたころの山の姿などは、山に興味を持たない人をも引きつけずにおかない強い印象を与えるでしょう。

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楽しいひとときを(昭和62年12月20日号掲載)

今回は、子どもたちに人気のある絵本を紹介します。子供たちは、楽しくて愉快なお話しが大好きです。そして、そんなお話しをお父さんやお母さんが読んでくれたら、大喜びです。慌しい日常の中でゆったりと親子でくつろぐ時間を持つのもよいのではないでしょうか。

『ひとまねこざる』

H・A・レイ作 光吉夏弥訳 岩波書店

知りたがりやで、まねしたがりやのこざるの「ジョージ」は、動物園から逃げだします。街にでておなかのすいたジョージは食堂で捕まったり、ビルのガラスふきをしたり、部屋の中をペンキでジャングルにしてしまったりの大騒ぎを繰り広げ、とうとうけがをしてしまいます。けれども大好きな黄色い帽子のおじさんが迎えに来て・・・・。とんでもないいたずらを引き起こすこざるに、子どもたちは共感を込めて喝さいを贈ります。漫画風の絵は、伸びやかで明るく、楽しいお話しをいっそう引き立てています。

『からすのパンやさん』

かこさとし作 偕成社

いずみがもりのからすのパンやさん家では、赤ちゃんが生まれて大忙し。できそこないのパンを作ってしまったり、お客さんを待たせたりするので、だんだんお客さんが来なくなってしまいますが、子どもたちのアイデアで変わった形のお菓子パンを売り出し大評判になります。作者独特の、細かに描かれたいろいろなパンの楽しさ、からすたち一羽一羽の愉快な表情には、思わず笑いを誘われてしまいます。

『ろくべえまってろよ』

灰谷健次郎文・長新太絵 文研出版

深い穴の中に落ちた子犬の「ろくべえ」を助けようとする子どもたちのお話です。上級生はまだ帰ってきません。大人たちもわいわい言うだけで助けてくれません。子どもたちは、ろくべえに歌を歌ってやったり、シャボン玉をしてあげたりしますが・・・・。そして、とてもすてきなことを考えつきます!長新太の絵が、子犬に寄せる子どもたちの温かい気持ちをよく伝えています。

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本嫌いな子どもたちに(昭和62年11月20日号掲載)

本嫌いの子どもたちにも勧めたい、楽しい世界が広がる愉快な本を紹介します。

『小さなスプーンおばさん』

アルフ・プリョイセン著 大塚勇三訳 学習研究社

突然、何の前ぶれもなく、ティースプーンぐらいに小さくなってしまうおばさんの物語です。でもおばさんは、「なるほど。スプーンみたいに小さくなったんなら、それでうまくいくようにやらなきゃね」と、少しもあわてず、どんな事件が起きてもその困難をてきぱきと乗り越えていきます。作者プリョイセンはノルウェーの片田舎で生まれた人で、この物語にも大自然と向き合って暮らしている人達の大らかさや素朴さが感じられます。

『大どろぼうホッツェンプロッツ』

オトフリート=プロイスラー著 中村浩三訳 偕成社

ある日、カスパール少年のおばあさんの家にどろぼうが入りおばあさんをおどして、大事なコーヒーひきを奪いました。その大どろぼうの名はホッツェンプロッツ。カスパールは、このコーヒーひきを取り返すため、仲よしのゼッペルといっしょに大どろぼうを捕まえる決心をします。ところが、二人は大どろぼうに捕まってしまい、カスパールは大魔法使いツワッケルマンに売り飛ばされ、そこでカエルにされている妖精アマリリスと出会い、さらに冒険を重ねます。登場人物は、それぞれの人間性が誇張して描かれたおかしさがあり、筋立てはスピーディな場面展開と相まって、ぐいぐい引き込まれるおもしろさを持っています。

『魔女の宅急便』

角野栄子作 林明子画 福音館書店

魔女の少女キキは黒猫のジジといっしょに独り立ちの旅に出かけ、やっと見つけたコリコの町で宅急便の仕事を始めます。最初は仕事も軌道に乗らず、失敗ばかりで心細い思いを味わったりしますが、いろんな事に遭遇し、経験を積む中で、人の気持ちや行動が理解できるようになります。ほうきに乗って飛んでいるキキは、わたしたちにとてもさわやかな風を吹きこんで勇気づけてくれます。

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広告の本(昭和62年10月20日号掲載)

最近は広告関係の図書の出版も数多くあり、それぞれがユニークな特徴を生かした本づくりをしています。今回はその中から、中央図書館に所蔵されている本を紹介しましょう。

『ヨーロッパの看板』

向田直幹著 美術出版

写真家である著者自身が長いヨーロッパでの生活体験の中からそれぞれの国の街なかにかかっている看板を丹念に収録したものです。長い歴史とともに歩んできた看板から、新しい近代的な町並みと調和したモダンな看板までユニークなものが、多くの写真で収められています。数多くの中から、時代がかった居酒屋の看板などに出会うとまた一風変わった旅情をそそられるかもしれません。同じ著者による『アメリカの看板』も刊行されています。

『ADVERTISING(広告) 世界100年ベスト作品』

ブライアン・ホーム編 青木俊夫訳 誠文堂新光社

広告はその時代の文化を通し時代層を写し出しているといわれます。本書はその「時代の波」の百年間をまとめたものです。正確には1880年から1980年までに発表された英米の広告作品を紹介した写真集です。ひとつひとつの広告をページを繰って見ているだけで、1世紀にわたる文化史の流れが浮かび上がってくるようです。また、タバコの広告に出ているレーガン米大統領の若かりしころの写真があるなど話題性にも富んでいます。

『CM年鑑』

全日本CM協議会編 誠文堂新光社

毎年行われている全日本CMフェスティバル入賞の全作品を収録し解説を加えたものです。本書を通読してみると、この1年間に日本を駆けめぐったCMが実に多く、多彩であったことがわかります。まさしく流行を作り出し、支えていると言っても過言ではないでしょう。そのようなCMがビデオ・ラジオ・フィルムの分野にわたって収められています。

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ファンタジーの世界へ(昭和62年8月20日号掲載)

楽しい夏休みもあとわずかです。今回は、ファンタジーの本を紹介します。不思議と冒険が繰り広げられる空想の世界は、子どもばかりではなく、大人をも引き付けずにはおかないでしょう。

『夜中出あるくものたち』

ジョン・メイスフィールド作 石井桃子訳 評論社

夜の世界は、昼の世界にはない魔法が生きているような気がしませんか。この話は、ケイという少年が、夜中、集会を開いたりする魔女パウンサー夫人一味と宝捜しを競う、冒険とスリルに満ちたファンタジーです。古い大きい館にすむケイは、意地悪な家庭教師に夕食ぬきで寝かされたある晩、猫のニビンズの誘いで夜の世界に飛び立ち、夜中出あるくものたちを知ります。そして、数々の不思議な冒険ののち、とうとう宝を見つけ出して正当な持主であるサンタ・バーバラの大司教に返し、古い館にも平和が戻ってきます。作者メイスフィールドは、英国の桂冠詩人としても名高い20世紀有数の文人です。

『クラバート』

ブロイスラー作 中村浩三訳 偕成社

「大どろぼうホッツエンプロッツ」などでおなじみのプロイスラーが、ドイツのラウジッツ地方に伝わる「クラバート伝説」を下地に、11年の歳月をかけて書きあげた長編です。中世を舞台に少年クラバートが荒地の水車場の見習として、親方と11人の職人たちにもまれて成長し、ついに生死をかけて親方と対決するまでの3年間を、四季の自然、キリスト教の祭礼、デカ帽伝説などを織りこんで描いています。運命を暗示する夢や奇抜な魔法の物語は、ひとたび読みはじめたら最後まで読み通さずにはいられません。少女の愛の力を得て、邪悪な魔法を打ち砕くクライマックスでは、主人公の胸のおののきが伝わって来るようです。この物語は、ファンタジーの形式を借りて、人間の生き方を問いつつ成長する若者の姿を描いているといえるでしょう。

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野外に出て観察してみよう(昭和62年7月20日号掲載)

夏休みには、野外生活を体験したり、田舎へ出かけたりして自然とふれあう機会が多くなります。身近な植物を観察したり夜空を見て、星座を捜してみるのも楽しい経験です。予備知識があれば、いっそう興味をひかれるでしょう。そんな本を紹介します。

『冒険図鑑』

さとうち藍文 松岡達英絵 福音館書店

この夏、初めてのキャンプに出かける人は、期待と不安で胸の高鳴りを覚えていることでしょう。そんなときこの本は、知識と心の準備に役立つでしょう。この本には、野外で生活すために必要なこと、歩く、食べる、危険との対応に加え、野外生活をより豊かにするために、作って遊ぶ、動物・植物との出会いが書かれています。広範囲なとらえ方と、ていねいに描かれた豊富なイラストが、この本をわかりやすく楽しいものにしています。

『野山でたのしむ夏の草花』

河野玉樹文 大室君子絵 さ・え・ら書房

身の回りの草花に、ちょっと足を止めて見てみませんか。いつもは通り過ぎている道にも、野山にも驚くほどかわいい花がたくさんあることに気が付くでしょう。ホタルブクロは、昔の子どもが、この中にホタルを入れて、ちょうちんごっこをして遊んだので、この名前が付いたそうです。変わった名前の由来や、食べられる草、薬になる草、ゆかいな遊びができる草など77種が紹介されています。意外と知らないことも多く、身近な草花に興味がわいてきます。

『星座12か月』

前川光著 大日本図書

夏休みは夜空を見るチャンスです。親子で星や星座について語り合い、はるかな宇宙へ夢を広げませんか。毎月の円形星図と、その月の代表的な星座が神話や伝説とともに紹介されています。ちょうどつゆ明けの7月には南の低い空にさそり座が見えます。早速、さそりの赤く輝く一等星アンタレスを見つけてみませんか。

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童画の魅力(昭和62年6月20日号掲載)

絵本は、最近子どもばかりでなく若い世代にも読まれているようです。それは絵本のもつ不思議な魅力に若者がひかれるということなのかも知れません。そこで今回は、絵本などの絵だけを取り上げ画集として1冊にまとめた童画集を紹介します。

『いわさきちひろ全集 全12冊』

いわさきちひろ著 講談社

亡くなってからすでに10年以上を経た今日でも若い女性を中心にして根強い人気のあるいわさきちひろの作品を収めたものです。国際的にも評価の高い独特の淡い色調の子どもの絵などが年代順にまとめられています。絵本として作られた絵も数多く載せられていますが、絵本の枠から離れて1枚の絵として見た場合、また、絵本と違った魅力が感じられます。ちひろファンにおすすめしたい本です。

『日本の童画 全13巻』

第一法規

日本の童画を集大成した本といえます。現在、絵本やイラストの分野で活躍している安野光雅、米倉斉加年、長新太などの画家をはじめ童画界の代表的な画家39人の作品を集めたものです。数多くの作品の中から選ばれた絵は、それぞれの代表作であり、日本の童画の歴史を一望できるようになっています。

『滝平二郎きりえ画集 第1集~第7集』

滝平二郎著 講談社

数多くの絵本などに独自のきり絵の世界を創り出している滝平二郎の作品集です。版画から出発した氏はのちに新聞紙上にきり絵を連載することにより一躍きり絵画家として有名になります。伝統的なきり絵を生かし、独自の世界を創り出した作品の数々は子どもから大人まで多くの人たちを楽しませてくれます。

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木の本(昭和62年5月20日号掲載)

緑が美しい季節に、木の本を物語や図鑑の中から何冊か紹介します。木と友達になれたらいいですね。

『あるきだした小さな木』

テルマ=ボルクマン作 シルビー=セリグ画 花輪莞爾訳 偕成社

両親に囲まれてしあわせに暮らしていた小さな木は、広い世界が知りたくなり、とうとうある日、体をゆすって地面から根を抜き、歩き出しました。小さな木は旅をし、途中でいろいろな人間と出会い、貴重な体験をし、ついに自分の世界を発見します。子どもが成長して自立していく姿が、小さな木と重なります。すがすがしい詩情と、色彩の美しい挿絵が印象的です。

『はるにれ』

柿崎一馬写真 福音館書店

北海道の広野にただひとり立つはるにれの木。四季折々のはるにれの姿を写真で紹介した絵本です。吹雪の中のはるにれ、凍てついた野に立つはるにれ、もやの中で光にかすみ、まどろんでいるようなはるにれ、夏の強いひざしの中の緑したたるはるにれ、そのどれからも、はるにれの生命力を感じます。それと同時に、取り巻く大気の流れや風のにおいまでが伝わってくるようです。

『木の本』

萩原信介文 高森登志夫絵 福音館書店

木の絵本図鑑です。春の木の花から始まり、芽吹きの様子、そして、大木も最初はこんなに小さな芽から育っていったのかと驚くのが、木々の芽生えが描かれたページです。スギやヒノキの何ともかわいらしい芽生えからは、あの大きな木は想像できません。また、この本にでてくるすべての木の、葉っぱだけを取り上げているページもユニークです。子どもから大人まで楽しめ、いつもは見上げている木の花や葉が、ぐっと身近に感じられます。

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やきものの美 アジアの陶磁(昭和62年4月20日号掲載)

一口にやきものと言っても世界中にはいろいろな種類のやきものがあり、同じ国の中でも地域や時代によって異なってくるようです。今回はいくつかの美術館の所蔵品を取り上げた本を中央図書館の蔵書のなかから紹介しましょう。外国の陶磁、特にアジア地域の陶磁器の美しさに触れられます。

『中国陶磁』

三上次男著 ケマル・チュー著 護雅夫訳 並河万里写真 平凡社

5世紀にわたるオスマン・トルコの歴史と芸術的豊かさとを秘めたトプカプ・サライ博物館収蔵の貴重なコレクションのうち、中国陶磁65点を厳選してカラー写真に収め解説を加えたのが本書です。コレクションの中でも世界有数と言われる青磁を中心とした白磁青花(染付)・黄磁などの代表的な作品を収めており、本書をとおし13世紀から18世紀にかけての中国の陶芸文化の豊かさを見る思いがします。

『安宅コレクション 東洋陶磁名品図録』

林屋晴三編 日本経済新聞社

世界でも有数の東洋陶磁コレクションの名品を収めた豪華図録です。私的なコレクションとして世界1と言われる李王朝の貴重な陶磁などをはじめとして膨大な内容を中国、高麗、李朝の3部に分けそれぞれ写真と解説が付されています。ほかに作家の立原正秋氏の興味深い陶磁随想も合わせて載せてあります。

『東南アジアの陶磁』

糸井健二著 島津法樹著 雄山閣

日本・朝鮮・中国の陶磁は古来多くの人々に研究され、またその美しさは多くの人々を魅了してきました。それに比べて東南アジアの陶磁はまだまだ未知の領域であり、その優れた芸術性はいまだ多くは知られていないと言われています。本書は、クメール、タイ、安南の地に11世紀以来伝わる代表的な陶磁器約2百点を多くの写真・解説とともに収めたもので東南アジアの「やきものの文化」を知るうえで貴重な本といえましょう。

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冒険への旅立ち 家出の本 その2(昭和62年3月20日号掲載)

安全で居心地のよい親の懐も成長とともに、時として窮屈に感じられるようになり、未知の世界へのあこがれは高まり、冒険心が沸き立ちます。そんな子どもの世界を描いた本を紹介します。

『ぼくにげちゃうよ』

マーガレット・W・ブラウン文 クレメント・ハード絵 いわた・みみ訳 ほるぶ出版

子うさぎのぼうやは、ある日家を出て、どこかへ行ってみたくなりました。そこで「ぼくにげちゃうよ」と言うと、かあさんうさぎは「かあさんは追いかけますよ。だって、おまえは、とってもかわいいわたしのぼうやだもの」と言います。それではと、子うさぎは、魚や山の上の岩などに形を変えて逃げると言います。2人の機知に富んだ会話でおはなしは発展していきます。暖かい愛情につつまれてこそ、冒険心もはぐくまれるのでしょう。ユーモアが漂い色彩豊かな絵も楽しめます。

『ピーターのいす』

E・ジャック・キーツ作 きじまはじめ訳 偕成社

ピーターは、自分の揺りかごやベッドが、妹用にピンクに塗り変えられるのを見て悲しくなりました。まだ塗ってない青いいすを見つけ、それを持って家の前に家出しますが、いすは、ピーターには小さすぎました。自分の成長を悟り、家に帰ったピーターは、お父さんといっしょにいすをピンクに塗りました。幼い子の微妙な心の揺れをよくとらえており、成長の喜びをみごとに描いています。コラージュ(はり絵)の絵からは、ピーターの家庭の温かさが伝わってきます。

『ルーシーの家出』

キャサリン・ストーア作 山本まつよ訳 子ども文庫の会

「あたし、家出するんだ。お話の本にでてくるひと、みんな家出するもん。そして、ぼうけんしたいんだ。」とルーシーは言います。そして、準備に準備を重ねて、8歳と3日目に、本当に家出をしてしまいます。無邪気で、行動力のある、勇敢な女の子ルーシーの快挙は、同じ年ごろの読者の心に、満ち足りた思いを残すことでしょう。

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日本の四季 写真集 (昭和62年2月20日号掲載)

日本の四季の移り変わりは古くから多くの人によって歌われたようにわたしたちにある種の詩情を感じさせてくれます。四季の変化はそれぞれに趣があり、それはまた、ところによっても異なってくるでしょう。このような日本の四季の諸相を多くの写真で構成している写真集を紹介します。

『武蔵野の四季』

山本健吉著 荒正人著 若杉慧著 毎日新聞社

武蔵野に残る自然を求めて、四季の移り変わりを丹念に撮った写真を集めているのが本書です。2百枚におよぶ「武蔵野」の写真は時の差こそあれ今なお残る自然の美しさを強く印象づけています。この写真の中に、「回想の武蔵野」という昭和初期から昭和40年ころまでの各地の風景写真をまとめたものがあり、その中にわたしたちの身近な風景を見い出すことができるかも知れません。しかし、写真をとおした過去と現在の様相の違いには少なからず驚きを覚えるでしょう。巻末には山本健吉、荒正人両氏の文が寄せられており、全編をとおして武蔵野に対する愛着が伝わってくる写真集といえましょう。

『岩手の四季』

川代鶴治著 講談社

美しい自然と風土、素朴な郷土芸能と祭り、そして古い歴史が刻まれた社寺などみちのく岩手のさまざまなものが多くの写真によって紹介されている写真集です。郷土の写真家川代鶴治氏が長年にわたって撮り続けてきた岩手の四季折々の美しい姿をカラーの写真に収めています。雪に埋もれた中尊寺のたたずまいなどは、北の国岩手を象徴する美しさといえましょう。ほかに作家の三好京三氏のエッセイも寄せられています。

『大和路の四季』

井上靖著 毎日新聞社

「地上いたるところに歴史のかけらは顔を出しており、地下のいたるところに歴史のかけらは埋まっている。」と井上靖氏が本書に寄せた1文で述べているように、今なお歴史的遺産が、あちこちに点在している大和の地の四季の姿を収めたのが本書です。1枚1枚の写真は、歴史的建造物や遺跡はもちろんのこと、農村風景や民家のたたずまいの中にもいにしえの大和を想像させるのに十分なものがあります。あわせて詩人の大岡信氏などによる詳しい解説が載せられています。

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日本の伝統美(昭和62年1月20日号掲載)

日本に古(いにしえ)から伝わる美術品・建築物は現代社会の中でも失われない伝統の美を持っています。そこには先人が残した時代の遺産を、見るものに感じさせます。今回は、日本の伝統美術として今なお多くに人々に親しまれている伝統美の数々を取り上げた写真集を中央図書館の蔵書の中から紹介しましょう。

『重要文化財 裏千家今日庵』

千宗室編 淡交社

千利休に始まる茶道の歴史は、多くの先人たちによって長い試練に耐え今日に至っています。本書は、茶道文化の歴史的遺産として知られる裏千家今日庵の写真集です。そこには裏千家の茶室遺構のすべてが収められており、歴史的由緒の正しさ、建築学的な貴重さの故に重要文化財の指定を受けたといわれています。四季の移ろいの中でたたずむ「今日庵」は時代を超えた「茶の美」を伝えています。

『京漆器』

京都漆器工芸協同組合編 光琳社出版

平安時代の宮廷文化にその源を持つ京漆器は、独特の美しさと洗練された技法により数多くの名品を残してきました。その京漆器の世界を江戸・明治・大正の時代にわたる作品の数々をとおし紹介したのが本書です。「硯箱」「盆」などの調度品や食器類・茶道具などがカラー写真によって収められており、そこから京漆器のもつ伝統の美しさを感じさせます。他に現代の京漆器界についての動向や、技法に関する論文なども寄せられており、京漆器の集大成ともいえる本です。

『古能面傑作五十撰』

長沢氏春撰 金春信高解説 毎日新聞社

能面は能楽における重要な役割をもち、一つの面で喜怒哀楽の変化を出すため、古来から彫り方、彩色の方法がくふうされてきたことはよく知られています。本書は現代の代表的な能面師である長澤氏春氏の撰による古能面の写真集です。最古の能面師、赤鶴の作による「蔵王」「獅子口」に始まる代表的な能面師による作品を50選び、時代を追って写真で収めています。本物以上に本物の魅力を再現している写真の数々をとおし、古能面の独特の美を鑑賞できるのではないでしょうか。

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絵本の古典から(昭和61年12月20日号掲載)

長い年月読み続けられてきた絵本は、それだけ多くの読者の鑑賞に耐えてきた、普遍的価値のあるものです。そんな古典的な絵本の中から、何冊か紹介します。

『ピーターラビットのおはなし』

ビアトリクス・ポター作・絵 石井桃子訳 福音館書店

子うさぎのピーターは、いたずら者で、お百姓のマグレガーさんの畑に入り込み、荒らしまわっているところをマグレガーさんに見つかり、さんざん追い回されます。身近な小動物を主人公にした、この小型絵本は、天性の子どもの性格と、その日常生活を反映しながら、動物の生態は正確に把握されています。文章は簡潔で、繊細な水彩画で描写された、動物や田園の風景はとても美しいものです。1902年にイギリスで出版されて以来、版を重ね、日本でも多くの読者の心をつかんでいます。

『ちいさいおうち』

バージニア・リー・バートン文・絵 石井桃子訳 岩波書店

静かな田舎に、りんごの木とひなぎくの花に囲まれた、小さい家がありました。春・夏・秋・冬、四季が過ぎ、時がたつうち、周りに工場が立ち、電車が通り、にぎやかな町に変わり、小さい家は、田舎の生活を夢見るようになりました。やがて・・・。自然へのあこがれが込められた詩情豊かな美しい絵本です。1942年にアメリカで出版され、アメリカの絵本の古典となっています。

『てぶくろ』

ウクライナ民話 エウゲーニー・M・ラチョフ絵 内田莉莎子訳 福音館書店

おじいさんが、雪の森で落としたてぶくろに、動物たちが次々に住みつきます。「だれ、てぶくろにすんでいるのは?」「くいしんぼねずみ、あなたは?」と、繰り返しの問答があり、ねずみ、かえる、うさぎ、きつねと、だんだん大きな動物がてぶくろの中に入ってきます。とうとう7匹めのくまが入り、てぶくろはいまにもはじけそうです。とても入りそうもない動物が次々にてぶくろに入ってしまったり、てぶくろがだんだん家らしくなったり、繰り返しの応答に幼い読者は大喜びです。ラチョフの重厚で民族色豊かな絵により、さらにこの民話の世界が深く楽しいものとなりました。

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日本の住居(昭和61年11月20日号掲載)

人の住む場としての住居はあらゆる建築の原点であると言われています。それはそこに時代時代の人々の息吹を伝えるものがあるからなのでしょうか。今回は日本の住居を取り上げた画集、写真集を中央図書館の蔵書の中から紹介しましょう。

『日本の民家』

向井潤吉著 保育社

向井画伯が描く日本の民家は多くの人々に親しまれ、その画風は見る人の心をとらえてきました。画伯は、工業化社会に変ぼうする農村をテーマにして農村の象徴ともいうべきわらぶき、かやぶきの民家を描き続けてきました。本書はその集大成であり、全国に散らばる埋もれゆく民家の四季折々の姿を描いた作品を収めた画集です。88枚にのぼる油彩は画伯がこよなく愛し、探し続けた民家の数々が自然とみごとに調和した姿で描かれています。

『住居』

藤島亥治郎著 浅野喜市写真 光村推古書院

本書は近代以前の日本の住居と都市の建物を収めた写真集です。天皇の御所から貴族、武士の邸宅、民家に至るまでを「都の家」「武の家」「町と村の家」というように分類し、それぞれに著者の詳しい解説が載せられており、単なる写真集だけではない研究書としての価値もみることができます。「さまざまの住宅の中には当然のこととしてさまざまの生活が込められていたし、それぞれの時代の文化はそこを舞台にして展開した」との著者の言葉は本書に流れる基本的な理念であり、それを考えあわせみると、収められている「住い」の数々は一つ一つの写真を通しそこに暮らしていた人々の思いを十分かき立てるものがあります。

『越後豪農の館』

新潟日報事業社出版部編 新潟日報

地主王国とうたわれた新潟県における豪農の家々は政治・経済・文化の担い手として深く地域に根ざしていました。戦後の大変革を経た今日、家々が時代とともに少しずつ消えてゆく中で現在に残るその姿を写真と解説で構成したのが本書です。その数は54家にのぼり、一つ一つに厳しい北国の地域社会の中心として存在してきたという豪農の盛衰を見ることができます。昨今の豪華な建物を取り上げた写真集が多い中では異色の写真集といえましょう。

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自立への旅立ち 家出の本(昭和61年11月05日号掲載)

児童書には、家出の本が、意外と多くあります。親から独立して、自立していこうとする子どもの心理の底に、家出は潜在的な願望としてあるのでしょうか。年頃に応じて、家出もさまざまですが、取り上げたどの作品にも、飛躍し、成長しようとする主人公を、ちょっと後押ししてくれるたのもしい大人が登場して、作品に魅力をそえています。

『フランシスのいえで』

ラッセル・ホーバン作 リリアン・オーバン絵 松岡享子訳 好学社

妹が生まれてからというものアナグマの子フランシスは、おもしろくないことばかりです。フランシスは、食堂のテーブルの下へ家出をすることに決めました。居間から聞こえてくる両親の会話から、家族の中での自分の存在の確かさを感じとります。すっかり安心して帰って来たフランシスは頼りになるお姉さんに成長していました。ユーモアに富んだ暖かい作品で、挿絵が雰囲気を盛り立てています。

『家出 12歳の夏』

M・D・バウアー作 平賀悦子訳 文研出版

ステイシーは、母親が家出した後、まま母がやって来たことに居たたまれず家出します。彼女を待っていたものは、草原の厳しい自然と、そこに住む2匹の犬とエラばあさんでした。過酷な人生を生き抜いてきたエラばあさんとの生活の中から、生きていくことのつらさ、真剣さを身につけていきます。大人の入口でとまどう少女の心理をよくとらえており、抑えめの文章は、人生の深みを感じさせます。

『クローディアの秘密』

E・レ・カニグズバーグ作 松永ふみ子訳 岩波書店

両親の不公平な待遇にも、同じことの繰り返しの毎日にも、すべてあきあきして、クローディアは家出を決心します。口が固く、こづかいをたくさん持っている弟ジェイミーを仲間に選びました。行く先は、メトロポリタン美術館。首尾は上々、ところが、特別展示の天子の像が、ミケランジェロの作か、というなぞ解きに夢中になってしまい、それが自分たちの家出や、隠れることより重要になってしまいます。この事件が、クローディアの内面に変化をもたらし、家に帰るきっかけを与えてくれたのでした。ち密な構成で文句なくおもしろく、姉弟の軽妙な会話にも味があり、現代の日本の子どもたちの感覚にぴったりの作品です。

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美術書の豪華本 人形の魅力(昭和61年9月20日号掲載)

日本の人形について語るとき、江戸時代を抜きには語れないと言われます。もちろん古くは「ひとかた」と言い宗教的な行事に多く用いられていたという歴史はありますが、中世以降鑑賞、愛がん用として発達をした人形が江戸の文化とあいまって急速に広がり現在に引き継がれています。今回はそのような伝統の中に生きる日本人形を取り上げた本を紹介します。多くのカラー図版などによって表された人形の数々は人間の歴史の中で作られてきた先人の優しさを十分に感じさせるものがあります。

『京人形』

面屋庄三著 淡交社

優れた伝統を持つ人形芸術の中で、常にその高い芸術性が認められている「京人形」を多くの写真とともに1冊に収めたものです。京人形が平安時代の宮廷ひな人形に起源をもち、江戸時代以降の衣裳人形、加茂人形などを代表作とした京都の伝統的な美術工芸品であることはよく知られているところです。本書は各種の京人形の代表的なものを取り上げカラーの写真とともに詳しい解説を加えています。また、「京人形の歴史」という巻頭の一文は単に京人形の歴史というだけでなく人形全体あるいわ他の事象とのかかわりの中で、京人形の移り変わりをとらえているのが興味をひきます。

『雛人形・五月人形羽子板 吉徳これくしょん』

山田徳兵衛編 東京堂

江戸から昭和にわたって庶民の生活様式の急速な変化の中で日本人が置き忘れてしまった古きよき庶民の文化財である人形などを集めた「吉徳これくしょん」の中から年中行事にちなむひな人形・五月人形・羽子板を選んで1冊にまとめたものです。多くの写真に解説がつけられており、時代を追って人形を見ることができます。また、「人形随筆抄」と題した幾つかの随筆が寄せられ本書理解の手助けになっています。

『御所人形』

清岡純子写真 角川書店

女流写真家の清岡純子氏が全国の名刹や所蔵家を訪ね歩いて撮影したものを、人形作家の鹿児島寿蔵氏の解説とあわせまとめたもので、御所人形の集大成と言えましょう。つやのあるまっ白い肌のおよそ3頭身の御所人形はあどけない中にも気品があり、日本人形の中では、様式的に最も完成されたものと言われています。また、その形からくる特長によって「頭大人形」「白肉人形」などとさまざまな名称で呼ばれています。そしてカラー写真で取り上げられた御所人形の一つ一つが見る者に歴史の深さを感じさせてくれます。

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楽しい冒険の旅へ(昭和61年8月20日号掲載)

夏休みもあとわずかです。いろんな所へ出かけた人も多いでしょうが、今度は、本の中で主人公といっしょになって冒険してみませんか。

『風のまにまに号の旅』

B・B作 神鳥統夫訳 大日本図書

「あなたには、大変な幸運が訪れる。それに、すごい冒険もある!」うたいねずみの、この予言はほんとうでした。あなぐまビルは、はたねずみのマティから“風のまにまに号”をプレゼントされて、冒険の旅に出発しました。途中で、はりねずみのイジーが旅の道連れになり、楽しい船旅が始まりましたが、船に積み込んであるマティのお金を、猫の海賊たちにねらわれてしまいます。自然描写が美しく読者も“風のまにまに号”の乗員のひとりとして、いっしょにイギリスの田舎を旅している気分になります。「あなぐまビルのぼうけん」シリーズ全6巻の第1巻で、さし絵も作者が描いています。

『名探偵カッレくん』

リンドグレーン作 尾崎義訳 岩波書店

スウェーデンの小さな町に住んでいるカッレは、名探偵になることにあこがれている少年です。カッレとアンデスとおてんばなエーヴァ・ロッタの3人組は仲間の3人組と「バラ戦争」やサーカスをしたり、ちょっとしたいたずらを考え出しては夏休みを楽しく過ごしています。そこへ現れたのが、怪しいエイナルおじさん。カッレは事件のにおいをかぎつけます。スウェーデンの子どもたちの現実の生活が、いきいきと描かれていると同時に、スリルのある痛快な読み物です。

『山のむこうは青い海だった』

今江祥智作 理論社

今日次郎は、小さな冒険を期待して死んだ父親の田舎へ出発しました。暑い夏の盛りのひとり旅です。その町で一体何が起こるのでしょうか。日本のどこにでもいるチンピラ諸君や、ゆかたの似合う女の子と繰り広げる小さな冒険が始まります。全体に流れる牧歌的な雰囲気が、物語をさわやかにしています。

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親子で楽しむ科学遊び(昭和61年7月20日号掲載)

今回は、親子で楽しめる、簡単な実験の本を紹介します。親子で遊びながら、科学の窓をのぞいてみませんか。ここに取り上げた本は、全図書館に所蔵されています。

『ふしぎないろみず』

大竹三郎著 岩波書店

赤キャベツのしぼり汁と家の中にある材料を使っておもしろい実験ができます。赤キャベツにはアントシアンという色素が含まれていて、それに酢、レモン、夏みかん、石けん、灰汁、重曹をそれぞれに加えるとさまざまな色に変化します。色の変わり方も鮮やかで視覚に訴えます。また、類書に「自然のなかの酸とアルカリ」(岩波書店)があります。小学校高学年向。

『シャボン玉の中は夢のくに』

宮川ひろ作 長谷川知子絵 ポプラ社

あなたは、シャボン玉の中に入ったことがありますか。そんなことができるのでしょうか。幼いころ、シャボン玉の中に入ることを夢見た少年は、大人になって理科の先生になりました。本書は、シャボン玉のじゅずつなぎ、二重丸などのシャボン玉遊びから始まり、シャボン玉液の調合の仕方、表面張力の測り方とシャボン玉を科学的に分析していきます。また、シャボン玉の中に入った著者や子どもたちの写真が美しく、夢が広がります。小学校高学年向。類書には「しゃぼんだま」(偕成社)があります。シャボン玉遊びが中心です。読むだけでも楽しめます。小学校中学年向。

『よわいかみ つよいかたち』

かこさとし著 童心社

この実験は、はがきと10円玉という身近な材料で実に多くのことを教えてくれます。内容は物理的なことですが、スリルもあって子供に喜ばれます。 わかりやすい文章で、著者である「わたし」と読者が一体となって進み、単純なものから、しだいに凝った実験へと進んでいくあたりは、子どもをあきさせずに終わりまで導くことができます。小学校低学年向。

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日本の庭園 写真集 (昭和61年6月20日号掲載)

桂離宮を初めとする日本の名園はよく知られています。また、その伝統と手法を引き継いだ現代の庭園も見直されているときとも言えましょう。それは日本の庭園が、時代を超えてわたしたちに訴えかける共通の何かがあるからではないでしょうか。今回はそのような日本の庭園の作品集を紹介しましょう。

『日本の庭 続(名園編・庭作編)』

重森完途著 毎日新聞社

この本は先に刊行された「日本の庭」の続編というべきもので、正編に未掲載の庭園を取り上げ、原色の図版、解説とともに収められています。名園編は上古、平安の時代から明治、大正にかけての数々の名園を時代を追って収録し、そこにはみごとな古典の庭が多くの写真で再現され、現代のわたしたちに問いかける何かがあります。作庭編の「現代の庭」と題した31人の作品の数々とあわせて考えるとき「庭園は現代の文明生活の中で失いつつある心の豊かさや自然の風景を残す数少ない物の一つである」との編者のことばは確かな重さをもっているようです。

『重森三玲作品集 庭 神々へのアプローチ』

重森三玲著 誠文堂新光社

庭園研究家として庭園研究の基礎を築いた重森氏の作品集です。伝統的な手法と現代的な感覚を融合させた作品を作庭記録設計図とともに収めており、表題の「神々へのアプローチ」とあるように氏がライフワークとして取り組んできた社寺庭園研究の集大成ともいうべき、京都松尾大社庭園をはじめとする作品を集めています。欧米の庭園研究に比べて、日本庭園の研究が遅れ、古来の名園の研究保護がなおざりにされる状況を憂い、そのため京都に定住し、亡くなるまで研究作庭に没頭していました。氏の作庭の代表作といえる作品集です。

『岩城亘太郎作品集 日本の庭 伝統編・現代編』

岩城亘太郎文 信原修写真 淡交社

古代から現代に至るまで、日本の庭園の歴史と伝統は脈々と受け継がれてきました。その歴史と伝統の技法を余すことなく表現した作品30庭園を四季にわたって網羅してるのが本書です。伝統編では「継承と創造」と題し日本の庭園史についての一文が収められ、取り上げられた写真図版の庭園には施主との対話という興味深い文が添えられており、平櫛田中館の庭園も代表作の一つとしておさめられています。また、現代編においては幾つかの作品をとおし現代建築における日本庭園の伝統美をみごとに表現しています。

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小学校に入ったら・・・(昭和61年4月20日号掲載)

今回は、小学1年生を主人公にした本を何冊か紹介しましょう。最近は、小学校に入学する前からひらがなが読めたりしますが、字が読めることと、文意が理解できるということはまた別のことです。「字を読めるのだから一人で読みなさい」ということより、まだまだ読んであげることも必要です。低学年のころは、本から何かを学ぶというより、想像力、空想力を培い、豊かな感性を育てていくような読書が重要なのではないでしょうか。

『くんちゃんのはじめてのがっこう』

ドロシー・マリノ作 まさきるりこ訳 ペンギン社

こぐまのくんちゃんは、きょうから1年生です。学校まで送ってくれたお母さんも帰ってしまい、くんちゃんは教室のいすの上で小さくなっています。上級生が前に出て字を書いたり、計算したりするのを見ているうちに、なんとなく不安になってしまったからです。でも先生がくんちゃんに言ったのは、「自分の名前と、同じ音で始まるものの、絵を描きなさい」ということでした。これならくんちゃんにもできます。くんちゃんの学校生活の第1日は、こんなふうに始まりました。大きな式などないけれど、そこには、素朴で自然な人間のふれあいがあり、くんちゃんは幸福なスタートを切りました。ペンの線に茶の色彩だけですが、素朴な雰囲気と温かさが伝わってきます。

『先生にはないしょ』

宮川ひろ作 長谷川知子絵 ポプラ社

ともゆきは鉄棒がだいっきらいです。「さか上がり先生」のクラスでさか上がりができないのは、ともゆきひとりです。ところが、先生の「こわいもの」を知った日から、ともゆきは、先生にはないしょでさか上りの練習を始めたのです。ともゆきを取り巻く、学童クラブの仲間や、先生の励ましが、とても暖かく描き出されています。

『大きい1年生と小さな2年生』

吉田足日作 中山正美絵 偕成社

体は大きいけれど弱虫のまさやは1年生、体は小さいけれどしっかりしているあきよは、2年生です。そんなまさやは、あきよをとても頼りにしています。けんかにも強くて、絶対泣いたことのないあきよが、踏みつけられたホタルブクロのために泣くのを見て、まさやは、あきよのためにホタルブクロを取りにいこうと決心します。ふたりの友情と、まさやの自立していく姿がさわやかに描かれています。

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美術書の豪華本 版画の魅力 (昭和61年2月20日号掲載)

Hangaということばが世界に通用するようになった今日、木版画・銅版画・石版画など多様な表現の版画が創作され、美術界でも版画展が随所に見られるようになりました。そこで、現在中央図書館で所蔵している版画集の幾つかを紹介し、版画のもつ魅力についてふれてみましょう。

『長谷川潔版画作品集』

長谷川潔画 美術出版社

60年間フランスに在住し、独自の銅版画の世界を作りあげ、パリに客死した版画家長谷川潔画伯の作品集です。現代版画界の世界的巨匠として名高い画伯の作品はほとんど身の回りの平凡な光景、草木、小鳥、魚、がん具などを扱いながら清朗で透明な感覚や深い神秘をもたらしています。本書には日本に一度として帰ることのなかった画伯の版画に打ち込んだ思いが伝わる数々の作品が収められています。銅版画のみならず、木版、油絵、石版、素描に至るまで画伯の多彩な足跡を示しています。作品図版とともに、多くの研究者による人物論、作品論が寄せられ画伯理解の一助になっています。

『畦地梅太郎全版画集』

講談社

小学校を卒業後、独学で版画を学び、現在木版画家として国内はもとより国際的な評価をも得ている畦地(あぜち)画伯の作品集です。初期から最近に至るまでの作品約3百点を原色図版単色図版で年代順に収めており画伯の画業の集大成といえましょう。また、山をこよなく愛した画伯の山の作品の数々や山男のシリーズも収められています。「彫りも刷りもさることながら版画の道がはるか彼方にある思いである」との謙虚な眼が創作姿勢に貫かれ、山に対しても人間に対しても同じようにごく自然の風景を求め続けてきた作家と言われており、その意味で本書は画伯の人柄をしのばせる作品集といえましょう。

『日本の城 全版画集』

橋本興家著 講談社

「日本の城は確かに美しい。・・・・・時の経つのも忘れてしまうような城行脚を昭和の初め頃からつづけたものである」と本文にあるように現代の版画家として著名な橋本興家画伯の城の全作品を収めたものです。本書では、姫路城にはじまる日本各地の城を四季のうつろいの中でみごとに現しています。北から南まで全国に及ぶ城の数々はひとつひとつが、また、幾つかの角度から描かれ、バラエティーに富んだ多色木版画による作品群が生み出されています。