位置情報

  1. 現在地
  2. ホーム
  3. 蔵書検索
  4. 図書アラカルト
  5. 図書アラカルト 昭和56年~昭和60年
  • 蔵書検索
  • 新着案内
  • 予約ランキング
  • 図書館資料分担収集
  • 図書アラカルト
  • 雑誌目録
  • 新聞目録
  • 図書館カレンダー
  •  利用者メニュー
  •  各館案内
  • 中央図書館
  • 仲町図書館
  • 花小金井図書館
  • 小川西町図書館
  • 喜平図書館
  • 上宿図書館
  • 津田図書館
  • 大沼図書館
  • 花小金井北分室
  • 小川分室
  • 上水南分室

蔵書検索

図書アラカルト 平成3年~平成7年

「図書アラカルト」は図書館に所蔵している本を、できるだけ多くの方に紹介するために、昭和56年4月から平成23年12月まで市報こだいらに連載していたものです。(市報未掲載分も収録)

テーマごとに図書館職員が選んだ一般書・児童書を紹介しています。

なお、内容は市報掲載(未掲載分については作成日)当時のものです。


幼い子のための絵本(昭和60年12月20日号掲載)

今回は、ごく幼い子のための絵本を取り上げてみました。0歳~2・3歳ぐらいの幼児はどんな絵本を喜ぶのでしょう。この年齢の子どもは、自分の生活経験が浅いのでごく身近なものに興味を示し、それを自己体験と重ね合わせて楽しみ、また、ことばの響きやリズムに敏感で繰り返しを喜びます。でもやはり一番大切なのは、絵本を通しての親子の交流ではないでしょうか。

『はけたよはけたよ』

神沢利子文 西巻茅子絵 偕成社

たつくんは、ひとりでパンツをはけないので、パンツをはかずに外にとびだすと、そのつるつるのおしりをいぬやねこに笑われてしまいます。そこで田んぼにいき、さぎのまねをして片足で立っていると、ころんでおしりは泥だらけ。でもおしりをおかあさんに洗ってもらってしりもちついてパンツをはいたら、ちゃんとひとりではけました。3歳児ぐらいの生活体験が明るい色彩で描かれ、楽しい絵本になりました。そこには、しつけでない幼児の自立と成長の姿があり、読む子の共感をよぶでしょう。

『いないいないばあ』

松谷みよ子文 瀬川康男絵 童心社

日本の伝承遊びをうまく絵本に取り入れたものです。ねこ、くまなどの動物とのんちゃんが「いないいない」をすると、それぞれ次の頁で「ばあ」という表情になります。どんな顔が出てくるか、頁のめくりの楽しさがあります。母親自身の「いないいないばあ」ももちろん大切ですが、この絵本ではその遊びに広がりが生まれます。1歳前後の赤ちゃんから楽しめます。

『ずかん・じどうしゃ』

山本忠敬作 福音館書店

赤ちゃんが初期に覚えることばのひとつで自動車のことをブーブと言ってとても興味を持ちます。幼い子向けの乗り物絵本は安易に作られたものが多いのですが、この絵本は車の好きな子を十分に満足させてくれます。きっちりした線とはっきりした色彩で、幼児の認識絵本として最適です。

このページの先頭へ


美術書の豪華本=洋画の世界(昭和60年11月20日号掲載)

最近、各種の美術館のにぎわいとともに数多くの豪華美術書が出版されています。そこで今回は中央図書館が所蔵する美術書の中で、日本の洋画家の作品集をいくつか紹介しましょう。

『野口彌太郎画集』

野口 弥太郎画 日動出版

日本の近代洋画史に輝かしい足跡と、1千点を越える作品を残し、76歳で亡くなった野口画伯の画集です。大正11年、23歳の時に、当時、画学生の登竜門であった二科展に、画伯が独学で入選したことは、早くから素質に恵まれていた事を物語っています。その後、渡仏しパリに居住して創作活動を行い、帰国後は独立美術協会を中心に活動を続け、数多くの作品を残しています。本書は画伯の作品の中から、年代を追って「セビラの行列」「那智の滝」などの代表作を収録しており、ほかにも、年譜・参考文献が付されています。

『小山敬三画集』

小山 敬三作 講談社

「私が初めて油絵を描いたのは16歳、それから70年間も描き続けてきました・・・・・」と序にあるように、現在の日本洋画壇の重鎮として、画伯の絵一筋にかけてきた情熱と歴史を思わせる画集です。画伯の画業の核心は、日本における洋画の歴史に本当の意味の“日本洋画”を作ることであるといわれていますが、本書には代表作「白鷺城」「浅間山」などの連作をはじめ数々の「静物」「人物画」を原色図版で収め、さらに壮大な壁画「紅浅間」も制作過程の解説とあわせ載せられています。作品のほかにも作家芹沢光治良氏による「心友小山敬三画伯」の一文をはじめ、画伯を知る上で欠かす事のできない文がいくつか寄せられています。

『田村一男画集』

田村一男著 朝日新聞社

本書は田村画伯の60年に近い全画集を集大成したものです。画伯は、画家を志した20歳の時から半世紀以上も山と高原風景一筋に打ち込み、人生遍歴の中で蓄積された思いの込もった作品を通し「これだけは人に一歩も譲らない」という世界を作ってきました。本書はそれらの作品の中から「梅雨高原」を中心とする高原連作、「陽月」「青い世界」「白霊」などの作品を年代順に収録しています。

このページの先頭へ


心豊かに 少年少女のために(昭和60年10月20日号掲載)

子どもたちにとっては、現代は慌ただしく、駆け抜けるように子ども時代を過ごさなければなりません。その貴重な時期に、心に深く感動する本と出会わせたいものです。今回は、静かにゆっくりと味わってほしい本を取りあげました。

『星の王子さま』

サン=テグジュペリ作 内藤濯訳 岩波書店

サハラ砂漠に不時着した飛行士である「ぼく」は、あるちっぽけな星からきた王子さまに羊の絵を描いてと言われ、なかなか描けずに箱の絵を描いて見せると、王子さまには心の中の羊が、ちゃんとは箱の中に見えるのでした。こうして王子さまと知り合いになったのですが、「ぼく」には箱の中の羊は見えませんでした。ある日王子さまは、5億の鈴が鳴りわたっているような笑いを贈り物にして、自分の星に帰っていってしまいます。作者は、「大人はだれも、はじめは子どもだった。しかしそのことを忘れずにいる大人は、いくらもない」と言ってます。肝心なことは目には見えないのです。心で見なくては。おとなになるに従って、こころの目は曇ってきてしまうのでしょうか。サン=デグジュペリ自身、少年時代とそのまま切れ目なくつながった大人だったのでしょう。なお、清らかに美しい挿し絵は作者自身の手によるものです。

『プラテーロとわたし』

J・R・ヒメネス作 伊藤武好・百合子訳 理論社

ヒメネスはスペインの詩人で、この作品は、ヒメネスの故郷であるアンダルシア地方で実際にあった小さな出来事を、プラテーロというろばの一生に託して書き綴ったものです。詩人はアンダルシアの自然の美しさを描き出すだけでなく、そこの町の人々、とりわけ幼いもの、弱いもの、貧しいものに目をそそぎ、そこに人生の真実を見い出そうとしています。「プラローテ」と呼びかける詩人のことばに、優しさ、悲しみ、嘆きなどが込められていて、心に響いてきます。詩人は、「子ども時代のような、黄金の心を持とうとする人のために」と、この美しい散文詩を贈ってくれたのでした。

このページの先頭へ


美術の豪華本日本画の世界(昭和60年9月20日号掲載)

今回は中央図書館が所蔵する美術書の中から、近代を中心とした日本画の画集を紹介します。

『横山大観 全5巻』

横山大観著 横山大観記念館その他 大日本絵画

近代日本画壇の巨匠、横山大観の明治、大正、昭和にわたる業績を集大成したものです。大観は、「流灯」「山路」(明治期)「生々流転」(大正期)「夜桜」「野の花」(昭和期)などの代表作を含め数多くの傑作を発表しており、古来の東洋画の特徴を生かした近代日本画の作風を示しています。本書は3代にわたる大観の画業を年代順に豊富な原色図版を取り入れ構成しており、特に第5巻は絵巻の大作7点が収められ、大部なものとなっています。その他、各巻ごとに「作品論」、「大観論」が付されており、研究書としての面にも力が注がれています。

『竹内栖鳳』

光村推古書院

横山大観と並び称される近代京都画壇の大御所であり、日本の近代美術史上に独自の光彩を放っている竹内栖鳳の作品集です。生来の画才に加え、フェノロサなどからの刺激も受け、また多くの古画などにも触れた積極的な創作姿勢は、作品に色濃く生かされているといわれます。本書は代表作「獅子」「古都の秋」などをはじめ、「雨霽」(うせい)「斑猫」など洗練された名作を年代を追って収めています。他に栖鳳の画業、画風についての論文も寄せられ解説、年譜などとともに栖鳳芸術理解の一助になっています。なお、「日本画素描大観」(講談社)の中にも「竹内栖鳳」が収められていますのであわせて鑑賞ください。

『村上華岳』

日本経済新聞社

日本の伝統的絵画や中国の宋元画、さらにインドやヨーロッパの宗教画を自在に取り入れ、優雅な宗教的、文学的な味わいのある作風を展開した村上華岳は、近代性を加味した新画風で特異な存在を示したと言われます。本書は華岳の代表作「聖者の死」「裸婦図」などをはじめ「太子樹下禅那」などの仏画、「冬ばれの山」などの山水画を原色図版でほぼ年代順に収めています。没後なお評価高まる華岳の画業を網羅した書と言えましょう。

このページの先頭へ


科学読み物、虫を食べる植物(昭和60年08月20日号掲載)

今月は、虫を食べる植物をテーマに取り上げてみました。植物が虫を食べる、そんな不思議なことがあるのでしょうか。食虫植物も元は普通の植物でした。なぜ、虫を食べるようになったのでしょう。その謎は、次の本を読んでいくうちに明らかになってきます。

『ハエトリグサ』

清水清著 岩崎書店

食虫植物の中で、一番人気があるのはハエトリグサです。それは、食虫植物の中では、最も捕虫器が発達している植物であるためかもしれません。その素早さは植物とは思えない程で、開いた葉の内側にある感覚毛に触れると、0.5秒の速さで閉じて虫を捕らえてしまいます。しかし、ハエトリグサも百発百中というわけではなく、逃げられることや横取りされてしまうこともあります。はえを捕らえるところ、カマキリとの対決、カタツムリの脱出などが、カラー写真でわかりやすく紹介されています。

『観察と栽培 食虫植物図鑑』

小宮定志著 朝日ソノラマ

食虫植物は、世界に7科490種が自生しています。本書では、日本のほとんどの食虫植物と世界の主な食虫植物が取り上げられています。食虫植物の栽培は難しいものではなく、こまめに手入れをすればだれでも育てることができます。食虫植物の栽培に役立つ本です。

『食虫植物のひみつ』

清水清著 あかね書房

食虫植物の捕虫の仕方には、3つの方法があります。葉から粘液を出して捕える鳥もち式、袋の中に虫を落とす落とし穴式、葉を閉じるなどして虫を捕るわな式の3つです。3タイプの食虫植物が、それぞれの方法で虫を捕える様子が、拡大写真やレントゲンなどで解説されています。捕虫方法の比較などの実験に欠かせない本です。
参考資料『食虫植物入手から栽培まで』(近藤誠宏・近藤勝宏著 文研出版)栽培、管理の仕方や、品種別の注意点のほか、具体的な入手の方法が網羅されています。

このページの先頭へ


伝記 その2(昭和60年07月20日号掲載)

今回は、地味な被伝者であり、作者の創作的色彩の濃い伝記小説風の作品を取り上げてみました。

『銀のさじ シーボルトのむすめの物語』

竹田道子作 金の星社

長崎出島に駐在するオランダの名医シーボルトと遊女“たき”の間に生まれた“いね”の半生紀です。父は国法を犯した罪で国外追放、いねは、混血であることで好奇の目で見られ、からかわれつらい少女時代を送ります。その後、父の弟子二宮敬作の献身的な援助を得て、父が薬の調合のため使った銀のさじを髪にさし、父への尊敬の念を支えにひたすら医学を志し、ついに日本最初の女医になります。女の一生としてだけでも、おもしろく読めますが、幕末の社会情勢もわかりやすく書かれており、いねを通して歴史を見ることもできます。

『夢を掘りあてた人 トロイアを発掘したシュリーマン』

ヴィーゼ作 大塚勇三訳 岩波書店

ドイツの貧しい牧師の子シュリーマンは、学びに学び働き続けました。10数か国のことばを自由に使いこなす語学の才能と商才、そして、強運に恵まれ、みるみる成功を重ね、大商人となっていきます。ロシア、アメリカなど世界を股にかけて活躍しますが、突然その事業を打ち切って、慣れない考古学の世界へ第1歩を踏み出すのです。幼い日の夢、ホメロスのうたった都トロイアを発掘するために。普通の尺度では測れない人物の物語で圧倒されますが、全編にみなぎる冒険精神は少なからず、読者を発奮させることでしょう。

『銭五とよばれた男』

森下研著 福音館書店

江戸後期、加賀の国で質屋としょうゆ醸造業をささやかに営む銭屋の長男五兵衛は、少年時代、千石舟で世界の海を帆走する夢を抱きます。同時に若侍から侮べつを受けた彼は、金の力で侍を見返してやろうと固く心に決めます。父は、人は金や身分ではなく心だと諭すのですが、取り合わず海商への道をめざします。天性の才と運にも恵まれ藩の御用商人にのし上がりますが、やがて、藩の財源にもなった密貿易や河北潟干拓事件によって人の心を失い、藩の術策にはまり獄死します。人の心や社会の仕組みは時代を超えて、現代に通ずるものがあり、興味深く読める作品です。

このページの先頭へ


美術書の全集(昭和60年6月20日号掲載)

美術書のページをめくりながら、静かな夜を過ごしていると、時のたつのも忘れるような、不思議な世界に出会うことがあります。それはその作品が持つ、時の隔たりを感じさせない生き生きとした存在感によるものなのかも知れません。今回は、7月2日に開館する中央図書館所蔵図書の中から、美術書の全集で代表的なものを紹介します。

『肉筆浮世絵 全10巻』

集英社

歌麿、北斎、広重をはじめとする、江戸の庶民の世界に生きた絵師たちが描いた、彩色豊かな直筆絵画、肉筆浮世絵を体系化したものです。国内の博物館や美術館などに収められているこれらの作品は、国宝、重要文化財も数多く含まれており、原色による図版は、何百年という時代を感じさせない現実感があります。原色図版のほかにも、各巻には詳細な作品解説が載せられており、浮世絵に関する論文も含めユニークな全集といえましょう。

『日本屏風絵集成 全17巻別巻1』

講談社

日本絵画史上、最も画期的とも言える大画面形成のびょうぶ絵を体系化したのが本書です。「山水画」「人物画」「花鳥画」などの画題ごとに、全作品がカラー図版で収められており正倉院にある有名な「樹下美人図」などをはじめ、狩野派に代表される金碧障屏画など、歴史の中で息づく作品の数々を集めています。それは、古代から近代へと続くびょうぶ絵の流れの中での代表的なものといえましょう。

『新修日本絵巻物全集 全30巻別巻2』

角川書店

絵巻物は私たちの祖先が残した文化財として、最も異色ある貴重な存在といわれています。「源氏物語」をはじめとしたこの全集は、日本の絵巻物を集大成しています。その物語的な内容を文字に著した詞書(ことばがき)と、それを絵に表した画面とが、交互に存在するというユニークな芸術形式をとっています。そして、その中で、今日の私たちの生活に根強い伝統をひく、祖先の信仰や生活の姿がどのようであったかを目の当たりにすることができ、読者の興味をそそることも多いといえましょう。また、伝統的な和紙である雁皮紙(がんぴし)を用い、実物の絵巻に最も近い色彩の再現をしています。

このページの先頭へ


伝記 その1(昭和60年05月20日号掲載)

自分の将来をおぼろげに考え始めた年ごろの人にとって伝記を読むことは、人生のよき道案内を得ることになるのではないでしょうか。多くの出版社から、同じ被伝者を扱って本が出されていますが、その中から読みごたえのある本を紹介します。

『人間・野口英世』

秋元寿恵夫著 偕成社

数多い野口英世の伝記の中でも本書は定評があります。血清学や医学史を専攻した著者は、この伝記を書くにあたっては、原点に立って、資料にあたり、日本やドイツで当時発行されたおもだった医学雑誌を丹念に調べています。内容は、他の伝記と違って、幼年時代の涙を誘う美談はなく、主に野口がアメリカに渡った後どんな仕事をしたかに注がれています。時代背景もしっかり書き込まれており、野口の行動の必然性がよくわかります。スーパーマンではない人間味あふれた野口英世像が浮き彫りにされています。巻末に、年譜および論文の一覧表があります。

『キュリー夫人』

E・ドーリイ作 光吉夏弥訳 岩波書店

著者のドーリイ女史は、イギリスの有名な教育家、児童文学者で、本書は、1939年にイギリスの最高の児童文学賞であるカーネギー賞を贈られています。夫人の業績であるラジウム発見の課程など、科学的記述もわかりやすく書かれていてすんなり読めます。ロシアの支配下にあったポーランドでの少女時代から亡くなるまでの一生が描かれています。恵まれた才能を負けん気と努力で開花させていく姿は感動的です。「光は悲しみをこえて」榊原晃三訳学習研究社も同じ作品です。

『ヘレンケラー』

丹野節子訳・編 小峰書店

本書は、ヘレン・ケラーの2つの自伝「私の生涯」のほとんど全訳と、その後編の「中流」を抄訳したものです。特に少女時代に重点を置いて訳されています。文章は明るく前向きで、少しもじめじめしたところがありません。読んでいると、見たり、聞こえたりするのではないかと錯覚してしまいます。そうなるまでの勇気と努力は、読者に深い感銘を残すことでしょう。巻末に年譜があります。

このページの先頭へ


豪華写真集 白川義員の世界(昭和60年4月20日号掲載)

今回は、風景写真の第1人者であり、国際的にも非常に高い評価を受けている白川義員の写真集を紹介します。同氏の数々の作品の中で、特に注目されるのが「地球再発見シリーズ」といわれる一連の作品集です。その中から小川西町図書館で所蔵するものを紹介します。

『中国大陸(上巻 悠久の山河、下巻 天壌無限)』

白川義員著 小学館

この作品は、地球再発見シリーズの最新作になります。白川氏がこの作品でねらったテーマは、今日の体制とは無関係に「永遠の中国」を撮ることでした。そのために費やした歳月は4年にもなりました。上巻は、名山五岳や漢詩の世界を主に撮影したものです。桂林近くの陽朔群峰の日の出から始まり、内蒙古の草原に浮かぶ初秋の月で終る81枚の写真は、そのすべてが中国の大地の美しさを伝えてくれます。下巻は、中国辺境地域の高山と流砂のシルクロードを撮影したものです。前半では、ヒマラヤ、パミールなどに、そびえ立つ山々の怒り、悲しみ、孤独を、後半では、シルクロードの栄華と、それを取り巻く自然の酷烈さをみごとに浮き彫りにしています。

『旧約聖書の世界』

白川義員著 小学館

この作品で特筆すべきことの1つは、今まで不可能とされていた、イスラエルとアラブ諸国の両圏にまたがる撮影に初めて成功したということです。旧約聖書の重要な舞台をすべて現地で撮影した、世界で初めての写真集と言えます。天地創造の地、モーセに導かれたシナイの過酷な砂漠、そして偉大な王の残した都市に至る87枚の写真は、単に旧約聖書を語るだけでなく、自然の厳しさ、偉大さを如実に物語っています。

『新約聖書の世界』

白川義員著 小学館

この作品は、新約聖書に記された重要な舞台、122か所を3年をかけて撮影したものです。その第1ページは、ベツレヘムの、まさにイエスが生まれんとするかのような夕景から始まります。40番目の、エルサレムの上空に踊り狂う稲妻をとらえた写真は、イエスの死の怒りを表しているかのようです。最後に死海を写して終るこの作品は、新約の世界を取り巻く過烈な自然も的確に映し出した、すばらしい写真集と言えるでしょう。以上、3点を紹介しましたが、それ以外にも豪華な写真集をそろえています。例えば、濱谷浩や、緑川洋一などが写した日本の風景写真集などもあります。

このページの先頭へ


古典童話を読む3(昭和60年03月20日号掲載)

『ガリヴァー旅行記(正)・(続)』

ジォナサン・スウィフト作 中野好夫訳 岩波書店

西洋でまだ、大人の小説すら生まれていないころ、その先駆的作品となったのが、1726年に出版された、この「ガリヴァー旅行記」です。本来は、大人のために書かれたものですが、たちまち「閣議から子ども部屋」まで入り込んだといわれるように、子どもの読者も獲得し、児童文学の古典ともなりました。作者の意図としては、政治や人間に対する風刺を描くために、ファンタジーの手法をとったのが、はからずも子どもたちに歓迎されたということでしょう。その豊かな想像力と奇想天外な物語のおもしろさは、今も変わらず子どもたちを引き付けることでしょう。(正)には、小人国、大人国、(続)には、飛び島、馬の国が収められています。

『ハイジ』

J・シュピーリ作 矢川澄子訳 福音館書店

この本の魅力は、何といっても繰り返し語られるアルプスの自然の美しさと、無邪気で素朴な少女ハイジでしょう。ハイジが夕映えを見て「火事よ」と叫んだり、干草のベッドと丸窓から見る星のまたたきなど、心に残る情景がいくつもあります。幸福の種であるかのようなハイジは、祖父のアルムじいの心をとかし、足の悪いクララを歩けるようにし、自分の周囲に喜びやほほえみをもたらすのです。人と自然が一体となった生き方や、美しい自然描写は、しばし現代の煩雑さを忘れさせてくれるようです。

『ジャングル・ブック (正)・(続)』

ラドヤード・キプリング作 西村孝次訳 学習研究社

とらのシア・カーンから逃れた人間の赤ん坊は、おおかみ夫婦によって助けられ、モーグリ(カエル)と名づけられて、彼らに育てられます。モーグリは、くまのバルーと黒ひょうのバギーからジャングルのおきてを学び、野生動物として生きる力と知恵と、人間としての誇りを身につけて成長します。インドの密林を舞台に、数々の動物が独創的に、そして空想の世界であるにもかかわらず、真実さにあふれてとらえられています。それはまた、人間社会を反映したものとみることもできるでしょう。この不思議な魅力をたたえた動物物語は、従来モーグリの話だけを選んで訳されていましたが、本書は「リッキ・テッキ・タービ」などの傑作を含めて、全部で15の小説が初めて訳出されたものです。

このページの先頭へ


外国文学の全集(昭和60年2月20日号掲載)

喜平図書館で収書している幾つかの分野の中から、今回は外国文学の全集を紹介します。

『ドイツ・ロマン派全集』

前川道介責任編集 国書刊行会

自我の趣くままに神秘あるいは幻想的な世界を現出させたロマン派のうち「青い光」、「ザイスの学徒」等を残し28歳の若さで去ったノヴァーリス、「くるみ割り人形とねずみの王様」「砂男」等夢幻的、怪奇的世界を夢想したホフホン等の代表作家はもとより、従来あまり取り上げられない作家の本邦初訳や思想・芸術等が収められ、ドイツ・ロマン派文学史ともいえる編集がされています。幻の青い花を求め、北方の幽遠な森へ旅してみませんか。

『オスカー・ワイルド全集』

西村孝次訳 青土社

「芸術が人生を模倣するよりもはるかに多く、人生は芸術を模倣する」(第4巻「嘘の衰退」所収)という逆説的警句に表されているように、この全集には唯美主義者でありその本質は知的で常に鋭い批評眼を持ち、当時の世紀末を退廃の中にも、モラリストとしての自己を表現した、ワイルドの生き方が感じとられます。ビアズリーの挿絵で有名な「サロメ」等のほか芸術論も収められ、巻末に訳注と解題また、年譜、人名索引、書誌等きめ細かな編集がされています。

『メルヴィル全集 全11巻』

坂下昇訳 国書刊行会

世界的名作「白鯨」で有名なハーマン・メルヴィルは、大洋での体験を基に「タイピー」、「オムー」等の作品を発表しましたが、当時の評価は低く、アメリカ文学史上の代表者として再評価されたのは死後30年も経てからでした。ここには、その長大さと難解さはともかくエイハブ船長と巨鯨モビー・ディックとの死闘を描いた「白鯨」を始め、処女作の「タイピー」、幻想的な「マーディ」さらに絶筆となった「ビリー・バッド」等が収められ、訳者の完訳で編集されています。以上ここに紹介したものは、全集のうちの一部ですが、ほかにも外国文学関係の個人全集や評論、研究書、詩、戯曲、小説等など幅広くそろえてあります。

このページの先頭へ


地方出版物 ふるさとの食と味に関する本(昭和60年1月20日号掲載)

地方出版物の中には、郷土の伝統食を紹介した本もたくさんあります。今回は全国の郷土食に関する本を幾つか取り上げてみました。もう一度ふるさとの食文化と味を見直して見ませんか。

『なにゃとやら 岩手県北地方の伝統食を探る』

なにゃとやら編さん委員会編 熊谷印刷出版部

岩手県北地方(軽米町、二戸市、大野村等)の豆類、雑穀類を中心とした食物についてまとめられたもので、郷土食の味と栄養、食習民俗、料理方法のほか、周年的な行事食の意義についても書かれています。郷土の食文化を知るうえでも貴重な本といえます。巻末には、豆類、雑穀類に関した、ことわざ、格言も載っています。「なにゃとやら」とは県北地方に残っている南部盆歌の一説です。

『京都の漬物』

京都府立総合資料館編 白川書院

漬物は昔から日常の食生活と深くかかわりをもってきた食べ物の一つです。京都では、古くから家庭だけでなく産業としても漬物が独自の地位を占めています。本書では、京都の代表的な漬物、千枚漬、柴漬等約50種類の漬け方を紹介してます。また項目を変え、漬物が食生活にかかわってきた過程、漬物の歴史等についても述べられており、京都の食文化についても知ることができます。

『信州そばの話』

銀河書房編 銀河書房

そばといえば信州、信州そばはふるさとの味ともいわれています。この本は、ごく一般的なそばに関する本で、信州そばを少しでも味わい深く食べてもらいたいという願いが込められています。内容は、そばの種まきから収穫まで、そばの歴史、そばの食べ方、成分分析等、そばができるまでの背景や風土について書かれており、信州そばの実態を知ることができます。別冊として「長野県下各地のそば店の紹介」もあります。

『土佐・味の百科』

高新企業出版部編 高知新聞社

書店で見かけるテキストブック風のクッキングブックとはひと味違った料理の本です。土佐の町や里に、遠い昔から受け継がれてきた、郷土料理がすべて紹介されています。内容は、1ふるさとの味・男の手料理約200種類を四季別に紹介、2土佐で手に入る時期の材料をもとにした土佐料理、日本料理の紹介、3食べ歩き随宗等ふるさとの真の味を思い出させてくれる本です。ぜひ、家庭で土佐の郷土料理を味わって見ませんか。

このページの先頭へ


古典童話を読む2(昭和59年12月20日号掲載)

『トム・ソーヤーの冒険』

マーク・トウェイン作 大塚勇三訳 福音館書店

トムは、アメリカ南部ミシシッピー湖畔の小さな町に住んでいるわんぱく少年です。学校をさぼり、いたずらを重ねては育て親のポリーおばさんをいつも嘆かせています。トムは、友達の浮浪児ハックの自由な生活にあこがれを持っています。そしてハックたちと島で海賊生活をしたり、墓場での殺人事件の目撃や、危うく行方不明になりかける洞くつ探検など、数々の冒険を繰り広げます。1876年に出版されたこのアメリカの少年小説の傑作は、少年時代の持つキラキラした生命の輝きが全編にみなぎり、躍動感に満ちあふれています。少年時代の夢の日々が再現された無類に楽しい本です。

『秘密の花園』

F・H・バーネット作 猪熊葉子訳 福音館書店

「小公子」や「小公女」で知られるバーネット夫人が、1911年に出版した作品です。コレラで両親を亡くし、ヨークシャーのおじの屋敷に引き取られたメリーは、わがままで不健康なみっともない子どもでした。そしてこの屋敷には2つの隠されたもの、塀をめぐらした庭と病身のコリンがいました。ある日、メリーは散歩中にコマドリの先導によって、10年間閉ざされたままの「秘密の花園」の内側に足を踏み入れたのです。ディコン少年とこの荒れた庭を手入れし、ついに「秘密の花園」がよみがえったとき、メリーもコリンも心身共に健康になっていたのでした。自然と愛情が、メリーたちに幸福をもたらせてくれたのです。

『ピノッキオの冒険』

コッローディ作 杉浦明平訳 岩波書店

ジェッペットじいさんが彫った木の操り人形ピノッキオは、木切れだたころからたいへんないたずらものでした。そしてわがままで誘惑に乗りやすく、失敗を重ねては何度も危険な目にあいます。そんなピノッキオは、子ども本来の姿そのままで、読者はピノッキオの行動にはらはらさせられたり、共感を覚えたりすることでしょう。(いずれも小学4・5年生以上)

このページの先頭へ


和歌の全集紹介 現代の歌人たち(昭和59年11月20日号掲載)

和歌は短い言葉の中に作者の思いが込められ、古代から現代まで日本という風土の中に育った独特の文学表現といわれています。今回は現代和歌を中心にして市内図書館に収められている全集を幾つか紹介しましょう。

『現代短歌全集』

筑摩書房

明治の短歌革新運動期より昭和40年代までの百年の短歌の歴史の中から、その時代時代の主要な歌人186人の代表的な作品を収めたものであり近代短歌の集大成といえます。「みだれ髪」「一握の砂」「赤光」など日本の文学史上特筆される作品をはじめ現在では入手困難な貴重な本も多数収められ、鑑賞のみならず短歌研究にも耐えうる内容になっています。同時に各歌集の意義、時代背景、解題や歌人紹介にも頁をさいており、資料性も重視しています。全15巻で時代別に構成されています。

『現代短歌大系』

三一書房

戦後代表歌集すべてを網羅したものです。斉藤茂吉、釈迢空など戦後の短歌史の中で欠かすことのできない第一線の歌人をはじめとして新進気鋭の歌人まで多くの作家の作品を収めています。また取り上げたひとりひとりの歌人に対する興味ある作家論が現在文壇で活躍している作家たちによって書かれており、ユニークな一文として短歌愛好家ばかりでなく一般の文学愛好家にも気軽に読めるように配慮されています。

『昭和万葉集 全20巻』

講談社

8世紀の中期『万葉集』によってあらゆる階層の人々がそれぞれの生活を歌ったという事を考えるとき、昭和も数多くの庶民がその生活や生活感情を和歌に歌い残している「万葉」の時代といえましょう。知名歌人をはじめ物故者の作品さらに無名歌人の多くの作品が収められており、その一つ一つをとってみても昭和の50年間の動乱渦中の人々の悲しみ、喜びが歌に託されています。時代順にまとめられており、その一つ一つを追っていくと昭和の庶民の歴史が鮮やかに浮かんでくるようです。

『現代歌人文庫』

国文社

塚本邦雄、岡井隆、寺山修司らを中心に起きてきた前衛短歌運動は戦後短歌の歴史にきわめて本質的な問題を投げかけました。この全集はその後に続く佐々木幸綱、村木道彦、岸上大作などを含め、この運動を支えた25名の作家を選び、昭和25年から50年ごろまでの自撰歌、および代表的歌論、作品論を収めています。

このページの先頭へ


古典童話を読む1(昭和59年10月20日号掲載)

世界の古典的な名作童話は、幼児や低学年にも読めるように、翻案されたり、抄訳されたものが、数多く出版されています。けれども、本当はその物語が理解できる年齢に、完訳でその世界を味わいたんのうさせたいものです。

『若草物語』

ルイザ・メイ・オールコット作 掛川恭子訳 学習研究社

マーチ家の4人姉妹は、父親を南北戦争に送り出したあと、母親を助けながらも明るくけなげに暮らしています。そんな状況の中での日常生活が、細部まで生き生きと語られ、日々の出来事の中から生まれるさまざまな事件での喜びや悲しみを経て、4人が成長していく物語です。4人はそれぞれきわだった性格で描き出されていて、あたかも実在人物のような存在感を持って読者に迫ってきます。そこには普遍の少女像があり、それがこの小説が百年以上も読み継がれている魅力なのでしょう。

『ピーター・パンとウェンディ』

J・M・バリー作 石井桃子訳 福音館書店

「ピーター・パン」という名を知らずに育ってしまう人はごくまれなのではないでしょうか。「ピーター・パン」は、もとは戯曲で1904年に初演され好評を博しました。これが作品になったのが、1911年に発表されたこの「ピーター・パンとウェンディ」です。永遠の少年ピーター・パンは、バリーの素晴らしい空想力の産物です。そして海賊フックと彼をねらうチクタクワニ、妖精を信じることによって生き返るティンカー・ベルなども忘れがたい人物です。ピーターはこれからも、私たちの心の中で生き続けていくことでしょう。

『二年間の休暇』

J・ベルヌ作 朝倉剛訳 福音館書店

孤島に漂着した15人の少年たちは、自然と闘い、国籍の違いから起こる偏見や対立を乗り越えて友情を高め、秩序を持った集団生活を築いていきます。そこに、15人の少年の個性が浮き彫りにされた人間ドラマが鮮やかに展開されています。この作品は、「十五少年漂流記」という題名で親しまれているものを、原作どおりに「二年間の休暇」とし、訳も完訳にしたものです。(いずれも小学校高学年以上)

このページの先頭へ


文学全集の紹介 明治の作家たち(昭和59年9月20日号掲載)

封建制が終わりを告げ新しい文化れい明の中で、人間性解放や自我の確立を目指した浪漫主義的、写実主義的文学が起きてきたのが明治文学の特徴といえます。明治百年といわれてから久しい今日、明治時代の文学に触れることは日本の近代文学を考えるうえで興味あることかもしれません。今回は、市内の図書館で所蔵している明治の文学者の全集をいくつか紹介します。

『二葉亭四迷全集 全9巻』

二葉亭四迷著 岩波書店

二葉亭四迷が日本近代小説の始まりといわれる『浮雲』の作者であることはよく知られています。しかし、幾つかの著作以外は読まれる機会が少なかったのですが、この全集によって彼のほとんどの文学的業績が広く収められ、作品を体系的に読むことが可能になっています。創作、ロシア文学の翻訳、評論、紀行、日記などほぼ年代順に編集されており、『浮雲』などの小説、『狂人日記』をはじめとしたロシア文学の翻訳などをみても百年という時代を超えて、読者を引きつけるものがあります。

『樋口一葉全集 全7巻』

樋口一葉著 筑摩書房

日本の近代文学史に残る『たけくらべ』『にごりえ』『大つごもり』などの作品を残し若くして天折した樋口一葉の全著作をまとめたものです。小説をはじめ日記、随筆、和歌、書簡などが、漏れなく収められており、特に長い間保存されていた「書き損じ」や「書きなおし」を含む草稿類が『未完成資料編』として入っていて個々の作品の成立過程を知るうえで貴重な資料といえましょう。

『逍遥選集 全17巻』

坪内逍遥著 逍遥協会編集 第一書房

日本文化の近世から近代への転換期と成長期において文学と演劇の近代化への指導的役割を果たしてきた坪内逍遥の幅広い分野からの著作を集めています。演劇台本、演劇論、小説、随筆、人物論、シェークスピア研究など多岐にわたっており、また各巻にはシェークスピア演劇や歌舞伎などに関連した絵図写真が豊富に収められ、全体を興味深いものにしています。原著は大正15年から昭和2年の間に出版されたもので図書館に所蔵されているのは復刻版です。なお明治時代全体を含んだ全集として『明治文学全集』全99巻も所蔵しています。

このページの先頭へ


水と大地の本(昭和59年8月20日号掲載)

私たちは、川は自然にそこに流れているもの、草や木も自然に育つものと思っていますが、果たしてそうでしょうか。この機会に、自然を見つめなおすのもいいかもしれません。

『黒つちがもえた』

大竹三郎著 大日本図書

この本は、落葉の下の黒い土を燃やしてみるところから始まります。この黒い土は、ちりちりと光り輝いて燃えます。燃えないと思われた土が燃える。このことをきっかけに、ふだん感心のなかった土が、ただ岩石の細かくなったものではなく、長い地球の歴史の中で、動物や植物、微生物によって作られたものであることが、明らかになります。そして、その土によって生物たち自身も暮らしていけるという、自然の中の関係や大切さを教えてくれます。

『川は生きている』

富山和子著 講談社

武田信玄や加藤清正の治水事業のこと、そして水田や森林の役割、また、用水が農業だけでなく、飲み水や交通にも使われていたことなど、昔の人々が水に逆らわずに、水を利用して暮らしてきた様子が描かれています。ところが、堤防で川を締め切り、雨も川や海に捨ててしまうようになると、町は発展しましたが、水害や都市の水不足、水の汚染などの問題も生まれるようになってしまいました。この本では、水や環境について、わかりやすく書かれています。

『ひろがるさばく』

赤木昭夫著 岩波書店

砂漠はどうしてできるのでしょう。1つの原因は、自然の力です。サハラ砂漠で、カバの絵が見つかりました。そして、絵や花粉の化石の調査から、気候の変化で雨が降り、サハラが砂漠になってしまったことがわかりました。自然の利用をまちがえたため、砂漠になったところもあります。メソポタミアでは、農業用の水を引き過ぎたために、土地に塩がたまって砂漠化し、とうとう文明も滅んでしまいました。人間が、自然を利用して生きていくにはどうしたらよいか、考えさせられる本です。

このページの先頭へ


かえるの本(昭和59年7月20日号掲載)

今月は、かえるの本を取り上げてみました。かえるは、古くから子どもの友達です。親はもちろんのこと、子どものおたまじゃくしまで。今の時期なら両方とも見られます。おたまじゃくしは飼い方が簡単で手足の出る変化もあり、観察には最適です。夏休みには、かえるの世界をのぞいてみませんか。

『カエルにタバコをすわせたらどうなるかの実験研究』

岡村正孝著 童心社

この本は、第23回けんび鏡観察コンクールに応募し、文部大臣奨励賞を受賞した実験観察記録を本にしたものです。小学2年生の視点で、実験を思い立った動機、かえるが居なくて1年間待ったこと、実験装置の失敗と工夫などわかりやすく書かれています。観察記録を付けるときに、ぜひ参考にしたい本です。

『モリアオガエルの谷』

種村ひろし著 学習研究社

もりあおがえるを知っていますか。場所によっては、天然記念物に指定されているかえるです。もりあおがえるは、木の枝などに白い泡に包まれた卵を生むことで知られています。ベールに包まれたもりあおがえるの生態を、失敗を繰り返しながら明らかにしていく努力には、未知を科学する目が養えることと思います。

『カエルのくらし』

大塚高雄著 岩波書店

かえるは、身近な生き物ですが、意外と知られていない部分があります。この本は、日本に住む主なかえる12種の生態を豊富なカラー写真でわかりやすく説明しています。文字も大きく文章も平易で、小学校低学年向きです。

『両生・はちゅう類』

相賀徹夫著 小学館

かえるについて調べるには最適で、世界中のかえる16科138種が収録されています。特に日本産は、5科35種とほとんど全部収められています。また、名前だけでなく、その種の生態も詳しく解説してあります。かえるの好きな子どもなら、写真を見て解説を読むだけでも楽しめることと思います。

このページの先頭へ


新書本の紹介(昭和59年6月20日号掲載)

最近、ハンディで廉価なこともあって、多くの新書が利用者に読まれています。幅広い分野の事柄が、専門外の方にとってもわかりやすくまとめられているという点も、見逃すことのできない利点のようです。市にも、何点かの新書が各図書館に分担収集されていますので、今回はその中からいくつかを紹介しましょう。

『岩波新書』

岩波書店

新書の草分けである岩波新書が創刊されたのは、昭和13年、日中戦争が開始された直後のことです。以来、戦争による中断はあったものの、常に「現代人の現代的教養を目的」とした基本姿勢は、その時々の問題をとらえ提起してきました。そして、情報整理の古典といわれる「知的生産の技術」(梅棹忠夫著)、地域の文庫づくりの原動力となった「子どもと図書館」(石井桃子著)など、注目すべき本が数多く出版されています。現在、年代ごとに赤版、青版、黄版が刊行されています。絶版本が数多くあるのが惜しまれるところですが、評価の高い知識の宝庫として利用を勧めます。

『中公新書』

中央公論社

本シリーズは、昭和37年に発刊されたものですが、哲学、思想、心理学などから宇宙、コンピュータまでの幅広い分野にわたっての内容が網羅されています。特に「人と仕事・体験」のジャンルには、「新幹線」「電話」「そば」などユニークなものが多く含まれており、著者の啓蒙書にとどまることなく、まとめている意欲を感じさせる新書といえます。

『現代新書』

講談社

「単なる解説でない万人の魂に生ずる初発的かつ根本的な問題をとらえた」本を発刊以来数多く刊行しています。人文科学から、自然科学にわたる幅広い分野のテーマが取り上げられていますが、中でも、「新書日本史」「新書西洋史」などは、他の新書に見られない網羅的な歴史書として注目できます。また「日本人論・日本文化論」「日本語」などにも、数多くのユニークなものが見られ、比較的読みやすく手ごろな新書といえましょう。他にも、科学の分野を中心にしたブルーバックス(講談社)、経済経営を主に取り上げている日経新聞(日本経済新聞社)、フランスで刊行されているものの翻訳である文庫クセジュ(白水社)などの特徴を持った新書を、所蔵している館もあります。

このページの先頭へ


昔話を絵本にしたもの2(昭和59年5月20日号掲載)

『ももたろう』

松居直文 赤羽末吉画 福音館書店

よく知られている桃太郎の話を再話したものです。擬態語や繰り返しを、効果的に使ったリズミカルな文章が、耳に快く響きます。おばあさんが洗濯していると、桃が、「つんぶく かんぶく」と流れてきます。この桃から生まれたももたろうは、「一ぱいたべると一ぱいだけ、二はいたべると二はいだけ、三ばいたべると三ばいだけ」大きくなっていきました。ある日、からすが来てこう告げます。「鬼が島の鬼がきて、あっちゃむらで米とった。があーがあー、こっちむらで塩とった。があーがあー ひめをさろうて鬼が島。があーがあー」そこで定説通りに、ももたろうは鬼退治に出かけますが、結果は、宝物をもらわずにお姫様を連れ帰り、結婚してめでたしめでたしとなるのです。墨をにじませた日本画が美しい絵本です。

『ちからたろう』

今江祥智文 田島征三絵 ポプラ社

貧しいじいさまと、ばあさまのあかでつくられたのが、こんびたろうです。ある日、百貫目の金棒を大根のように振り回したので、ちからたろうと呼ばれるようになります。ちからたろうは、その力を人の役に立てたいと旅に出て化け物をやっつけます。原型は、東北地方に伝わる民話です。ちからたろうは、東北の貧しい農民たちの夢や希望の象徴だったのです。泥臭く力強さにあふれた絵は、そんな農民の思いが伝わってくるようです。

『スーホの白い馬』

大塚勇三再話 赤羽末吉画 福音館書店

最初のページをめくると、横長の見開きいっぱいに、雄大な草原にかかった大きな虹が目に飛び込んできます。もうここはモンゴルの世界です。モンゴルに伝わる馬頭琴という楽器が、どうして生まれたか、その物語が淡々と語られていきます。静かな語り口の中に深い情感が込められています。読み終わって本を閉じると、どこからか馬頭琴の哀しい調べが聞こえてくるようです。

このページの先頭へ


地方出版物の紹介ふるさとの本あれこれ(昭和59年4月20日号掲載)

地方小出版社の本は、一般の書店ではほとんど目にすることはできませんが、これらの本には、地方の文化、風土を伝える貴重な本が数多くあります。上宿図書館では、地方色豊かな全国各地の「ふるさとの本」約1千冊を所蔵しています。今回はその中から北日本を中心に4冊を紹介します。

『北海道砂金掘り』

加藤公男著 北海道新聞社

北海道内の砂金掘りは、江戸、明治、大正、昭和の10年代まで続いていました。戦後、ほとんどなくなった中で、山吹色に輝く砂金に魅せられて砂金掘りにロマンを託す人々もわずかながらいました。本書は、そのロマンを託した中の一人であった辻久雄氏の砂金掘り40年間を聞き書きによってまとめ、一個人の貴重な体験と日本では稀な砂金掘りの様子を興味深く語っています。

『岩手の地名ものがたり』

小島俊一著 熊谷印刷出版部

本書は、岩手の楽しい地名、山の名、峠の名、崖洞平、川に関する地名、海の地名、生活の地名、地名のルーツ、アイヌ語地名の各章からなっています。地名のルーツでは、「岩手」とは大昔の人々が岩のゴツゴツ出ているところを岩出(イワデ岩手)と名付けたからだろうとか、おもしろい地名の項では、死骨崎、鬼死骸、女殺坂などの気味悪地名、長流部(おさるべ)、女木(はたふく)、女遊戸(おなつべ)などの難読地名が紹介されています。楽しく読める岩手の地名研究入門書といえます。

『下北の民話と伝承』

佐藤徳蔵著 北の街社

今日、地方発掘の時代といわれ、長い間草深い田舎に埋もれていた郷土史や土俗史が再認識されるようになり、地方の文化に対する関心が次第に高まりつつあります。昔の人々は、憑依や神隠しを信じ狐に化かされ、人魂を見たという人のいかに多かったことか。このような素朴な心の生活感情を素直な気持ちで理解し、筆者の体験と考察とを織り混ぜて昔の下北を振り返っているのが本書です。

『秋田の大工職人』

佐々木藤吉郎著 秋田文化出版社

著者自身の手記で、14歳で大工職の徒弟となって、60余年にわたる職人生活を中心として、渡世の思い出、一軒の家ができあがるまでの経過、山子、木挽による用材の伐り出し、柿師、茅手、左官などの諸職人とのかかわり、さらに職人の迷信と信仰、隠語や気質などが語られています。巻末には参考資料として各種の大工道具の説明があり、民俗資料としても貴重な本といえます。

このページの先頭へ


昔話を絵本にしたもの1(昭和59年3月20日号掲載)

『三びきのやぎのがらがらどん』

マーシャ・ブラウン絵 瀬田貞二訳 福音館書店

ノルウェーの昔話を絵本にしたものです。小さいやぎと中ぐらいのやぎと大きいやぎが、山の草場で太ろうと、山を登っていきます。登る途中の谷川に橋があって、そこには、気味の悪いトロルが住んでいるのです。小さいやぎと中ぐらいのやぎがうまく橋を渡ったあと、大きいやぎとトロルとの対決となり、大やぎは、トロルを木っ端みじんにしてやっつけ、三匹のやぎはめでたく山へたどりつきます。起承転結のはっきりした、昔話の典型のような話なので、幼い子にもよくわかります。トロルは北欧の厳しい自然の象徴でしょう。それを克服して生きていく人間の姿がやぎに重なります。ブラウンの迫力のある絵が、この民話の世界をよく伝えています。

『やまんばのにしき』

松谷みよ子文 瀬川康男絵 ポプラ社

日本の民話には、やまんばの話がたくさんありますが、私たちが描いているやまんばは、髪振り乱した妖怪というイメージが強いのではないでしょうか。この秋田で採集されたやまんばは、とても人間的です。そしてこの昔話は、豪快でユーモラスで、日本の昔話としてはめずらしいのではないでしょうか。方言を巧みに生かした語り口と、絵巻物のようにけんらんな絵が、一味違った昔話の世界を繰り広げてくれます。

『太陽へとぶ矢』

ジェラルド・マクダーモット作 神宮輝夫訳 ほるぶ出版

昔、太陽の神が、命の力を一本の矢に変え、大地に飛ばしました。矢は、ある村の娘に当り、娘は身ごもります。生まれた男の子は成長すると、父親を探しに旅立ちます。途中で出会った老人は男の子を一本の矢に変えて、太陽に向けて飛ばしたのです。アメリカのプエブロインディアンに伝わる話です。モザイク調の色彩豊かな絵は、現代感覚にあふれていて、新鮮な魅力を与えてくれます。

このページの先頭へ


障害をもつ子の家庭教育書(昭和59年2月20日号掲載)

障害児教育の本はたくさん出版されています。今回は、その中から家庭でもできる指導書を紹介します。

『包丁なんかこわくない 料理編』

石井葉編 ぶどう社

発達につまずきをもつ子どもたちは、保護され、受身の生活に流れやすくなります。本書は、そのような子どもたちに、自分で生きていく力を身につけることを、身近な料理というわかりやすい作業で指導していく指導書です。内容は、基礎編、入門編、実際編、評価編の4編に分け、わかりやすい挿絵を豊富に取り入れ、指導するだれでもがわかるように構成されています。

『障害児のための手づくりおもちゃ』

芸術教育研究所編 黎明書房

遊びを子どもの世界と切り離して考えるわけにはいきません。しかし、障害児は、自発的に遊ぶことが困難な場合もあります。本書は、そのような子どもたちの心に強く働きかけるおもちゃを、身近な素材を利用し、障害児の部位別に68種紹介した本です。ぜひ家庭でもつくってみてください。

『障害をもつ子どもの遊びの日常指導』

森上史郎・柚木馥共編 教育出版

子どもの成長、発達は、遊びの中から生まれくるといっても過言ではないと思います。しかし、障害をもつ子どもは、この遊びからさまざまな理由で疎外されています。本書は、子どもの生活の周辺にあるさまざまな遊びの中から、障害をもつ子どもの今後の成長、発達に役に立つ遊び20例を紹介し、遊びを通して指導を考える日常指導の本です。

このページの先頭へ


情報の整理と活用(昭和59年1月20日号掲載)

情報化社会といわれる今日、わたしたちの身の回りにはたくさんの情報があふれています。そして、それをどう整理活用するかによって、かなり生活の快適度も違ってくるのではないでしょうか。図書館に所蔵されているもので、情報の整理、活用について書かれている本を何冊か紹介しましょう。

『知的生産の技術』

梅棹忠夫著 岩波書店

15年前に出版された本書は、今も多くの読者を得て、情報整理学の古典的な著作として知られています。今は一般的に普及している、カード方式による情報の整理が初めて紹介され、それ以来そのカードは「京大カード」として知られるようになりました。一つ一つの何んでもない、だれにも知られている技術(方法)を、全体として一つのシステムにつくりあげたことにこの本の意義があるといえましょう。

『整理学 忙しさからの解放』

加藤秀俊著 中央公論社

数多くの情報や資料の整理から主婦の家事の整理に至るまで、現代人は絶えず整理に追われていますが、それをどう処理したらよいのか、整理の方法とは何かについて平易に書かれたものが本書です。記録をし、保存をし、分類し、探し物のための手がかりを残す方法など、具体的な整理技術を述べながら、効率のよい整理学を明快に説いています。

『知的生活の方法』

渡部昇一著 講談社

著者は、知的生活とは「頭の回転を活発にし、オリジナルな発想を楽しむ生活である」と書いていますが、その発想に結びつけてゆくためのユニークな方法についてまとめているのが本書です。読書の技術、カードの使い方、書斎の整え方などなど、さまざまなヒントとアイデアが著者自身の体験を通してふんだんに示されています。なお、「続知的生活の方法」も続刊されています。

『身辺整理の心得』

井上如(ひとし)著 日本経済新聞社

「整理とは散らかすことと見つけたり、散らかしと片づけの繰り返しの中でこそ不要なものは除去され、創造の芽が発見できる」と。毎日やっている身の周りの整理を振り返り、そして、わたしたちが無意識的に、自覚せずにやっている身の周りの整理を、少し体系的にとらえ直そうとしているのが本書の主旨です。具体的には、個人個人が持っている名刺や手紙、書類、文献などの情報をどう整理活用すべきか等々、読者に合った整理法を提案しています。一般的な本としてお勧めしたい一冊です。

このページの先頭へ


昔話・・・その3(昭和58年12月20日号掲載)

昔話は、「むかしむかしあるところに」と始まると、またたくまに、この世ならぬ世界へ入って行ってしまいます。そこでは、さまざまな不思議が繰り広げられます。

『かぎのない箱』

ポウマン・ビアンコ文 瀬田貞二訳 岩波書店

森と湖の国フィンランドの昔話。寒い長い冬の間、炉辺で語り継がれた数々のお話の中の数編です。勇敢な主人公は、世界の果てまでも冒険に出かけ望みをかなえます。スケールが大きく、神秘的で、魔法にみちみちたお話がいっぱいです。岩波おはなしの本シリーズの一冊、このシリーズは、他に「りこうなおきさき」「まほうの馬」等読みごたえのある作品ばかりです。

『アジアの昔話1~6』

ユネスコ・アジア文化センター編 松岡享子訳 福音館書店

バングラデシュ、ラオス、日本などアジア16か国が参加して、アジア人のアジア人によるアジア人のための本作りを目的として編集されました。国によってお話の趣も違っていて、楽しみです。しかし、お話の底に流れる心には共通のもがあるようです。美しい挿絵は、それぞれの国の代表的な画家によって描かれています。

『子どもに聞かせる世界の民話』

矢崎源九郎編 実業之日本社

80の違った国々から一か国一編を目標に収集され、「王子や王女がでてきて、こんなんと戦ってしあわせになる話」等内容別に編集されています。珍しい話が豊富におさめられているので、子どもたちに、もっともっとせがまれるときには力になる一冊です。文章は平易な語り口調で親しみがもてます。

『日本のむかし話』

瀬田貞二ぶん 学習研究社

よく知られた昔話13編。明るく楽しい話が選ばれています。土地の言葉を会話に残し、地の文は、話し言葉に近い文章語を使用していてわかりやすく、リズムがあって、読むと、耳に心地よく響きます。

このページの先頭へ


タイトルなし(昭和58年11月20日号掲載)

今回は小平図書館、小川西町図書館が所蔵している美術書を紹介します。

『日本画素描大観 全10巻』

講談社

明治、大正、昭和の三代にわたる日本画壇の代表的画家10人の素描の傑作を集め、画家ひとりひとりの画業をまとめたものです。取り上げられている画家は、竹内栖鳳、上村松園、鏑木清方、安田靫彦、奥村土牛、東山魁夷、平山郁夫など10人で、それぞれの修行時代から円熟期に至るスケッチ、下図を多数収めているほか、作品の創作過程が、スケッチ、下図、本画と展開されていくのを興味深く紹介しています。各巻とも2百点余りの作品を、ほぼ製作年代順に収めていますが、未発表作品もかなり含まれており、素描画の集大成ともいえましょう。

『岩田久利 ガラスの世界』

岩田久利著 京都書院

本書は明治以後、安価な日常雑記となってしまった“ガラス”に芸術品としての美しさと品位を与えた最初の人、故岩田藤七氏を父に持ち、現在は、その亡き藤七氏の跡を継ぎ日本の最高のガラス工芸家として活躍している岩田久利氏の作品集です。その久利氏によって色ガラスを基調に作られた、古典ともいうべき高雅と清新な代表作270点は見る者を引き付けずにはおかないでしょう。

『富永直樹彫刻作品』

富永直樹著 実業之日本社

富永直樹氏は、日展彫刻の伝統でもあり、また、現在もその中心であり、写実主義ないしレアリズム彫刻の道を黙々として歩み続けて来た、日展を代表する彫刻家です。彼の数ある作品の中には、長崎グラバー邸の「トーマスブレーク・グラバー之像」などの代表作があります。本書は、富永氏が彫刻を始めてから約50年間に手がけた作品を集めた限定出版の作品集です。

このページの先頭へ


昔話・・・その2(昭和58年10月20日号掲載)

昔話は、不思議なことに、活字で読むより、耳から聞いてみるといっそうおもしろさが増幅されるようです。秋の夜長に、語ったり、読んでもらったりすると、子どもたちも新たなおもしろさを発見するかもしれません。

『世界むかし話 全16巻』

ほるぶ出版

各国別に構成されています。おなじみの、ヨーロッパの昔話をはじめ、アフリカ、太平洋諸島などの珍しいお話も収録されています。訳者は、それぞれの国に造けいの深い人が担当し、挿絵も、その国の風俗習慣に詳しい作家によって描かれていて、居ながらにして、世界中の昔話が楽しめます。

『世界のむかし話』

瀬田貞二訳 太田大八絵 学習研究社

主にヨーロッパの昔話、14編が収められています。どれも短く愉快なお話で、そのほとんどが、ぐるぐる話です。単純な形の繰り返しがおもしろく、一度聞くと、忘れにくいものです。「だれがいちばん大きいか」などは雄大なほら話で、すっかりど肝を抜かれてしまいます。挿絵はカラーのページも多く、温かみがあり、愉快な雰囲気がよく出ています。

『山の上の火』

クーランダー・レスロー文 渡辺茂男訳 土方久功絵 岩波書店

エチオピアの昔話15編が収められています。表紙はきれいな黄緑でさわやかな感じの本です。お話は、ユーモアに富んでおり、民衆の知恵があふれ、素朴で土の香りが漂っています。「グラの木こり」というお話は、日本の落語とよく似ていたりもします。挿絵は、単純ななかに力強さのある絵で、お話の雰囲気をよく伝えています。

このページの先頭へ


市立図書館所蔵の美術書を紹介(昭和58年9月20日号掲載)

今回は小平市図書館が所蔵している美術書を紹介しましょう。色彩豊かな美術書などをゆっくりと見るのも、秋の夜長を過ごすには最適かもしれません。

『近代日本の漆芸』

東京国立近代美術館著 淡交社

漆(うるし)工芸は、わが国工芸のうち、最も長い伝統を誇るものの一つであるといわれています。大陸文化の影響を受けながら、良質の漆液を産することを基盤にし、わが国の風土と歴史のなかにはぐくまれ、技術的にも芸術的にも幅広い展開を見せ、わが国文化の象徴の一つとして世界の注目を集めています。本書は漆工芸界を支え、活発な活動を見せている40名の作家の代表的な作品140点を、原色の図版でおさめ解説を加えたものです。日本の漆芸の集大成ともいえる本です。

『京都御所』

石川 忠ほか著 淡交新社

千年の古い都の中で、平安朝以来の歴史が息づいている京都御所の写真集です。これまで一般に公開されていない御殿の内部や貴重な美術品など、数多くの写真をおさめ解説したものです。重厚な建造物、そして美しい庭園など数々の写真によって、そこでくりひろげられたかっての宮廷生活を、思いおこすことができるでしょう。「京都御所」を民族の文化遺産として、後世に永く残し伝えなければならないという意味からも、貴重な写真集といえましょう。

『百富士』

中野好夫著 成瀬不二雄著 中川邦昭写真 毎日新聞社

古くから、和歌にもうたわれた「富士」は、日本人にとって単なる山以上の存在感があるように思えます。それゆえ、過去多くの人々によって「富士」が描かれてきたのかも知れません。本書は、鎌倉時代から室町、江戸そして、現代に至るまで、多くの画家によって描かれた代表的な「富士」をまとめたものです。古い時代から現代までの画家たち 北斎、広重、大観そして林武など の作品を年代順に並べ、その中で日本人の風景観の変遷をたどっているところが本書の特徴といえましょう。

このページの先頭へ


科学読み物(昭和58年8月20日号掲載)

自然の美しさ、不思議さに、人はひきつけられます。本は、その自然への好奇心を満足させ、科学のおもしろさを知らせてくれます。 今回は、「生きている化石」といわれる生物について書かれた本から、いくつかを紹介します。

『どんがめの海』

土屋圭示著 誠文堂新光社

元教員の著者と子どもたちが取り組んできた、10数年の研究をもとに、2億年もの間、ほとんど姿を変えずに生きてきたカブトガニの生態を解説しています。カブトガニのすみかや分類だけでなく、1年の3分の2は眠っていることや、15歳くらいになって始めて何匹かが雄になること、大人になってからは、雄雌いっしょに一生をおくることなど、カブトガニの暮らしを紹介しています。

『アマミノクロウサギ』

岡本文良著 学習研究社

アマミノクロウサギは、3千万年前に栄えていたムカシウサギの仲間で、天然記念物に指定されています。“台風とハブの島”奄美大島の生徒と先生による、クロウサギの飼育と観察の記録です。飼育場整備の努力や夜の観察からわかってきたクロウサギの生態だけでなく、ウサギのけんかや集中豪雨による子ウサギの死などを通して、子どもたちをの自然への見方や動物を愛する心の育っていく姿が描かれています。

『生きている化石オウム貝』

加藤 秀著 偕成社

オウム貝はとても古い生物で、6千5百万年前に滅んでしまったアンモナイトと同じ祖先を持っています。貝といっても、むしろイカやタコに近い仲間で、現在は南太平洋の一部だけにすんでいます。このオウム貝を世界新記録の387日間も飼育し、生態や体の仕組みなどを観察、研究した科学者たちの記録です。

このページの先頭へ


伝承的な遊びの本(昭和58年7月20日号掲載)

今回は、伝承的な遊びの本を紹介します。伝承遊びは、知ってる人が次代の子どもたちに伝えていかなければ、だんだんとすたれていってしまいます。夏休みは、親子で作り合ったり、遊んだりするのによい機会かもしれません。

『びゅんびゅんごまがまわったら』

宮川ひろ作 林明子絵 童心社

小学校の校長先生と児童たちの心の交流を暖かく描いていますが、その交流の橋渡しとなるのが数々の伝承遊びなのです。びゅんびゅんごま回しでの校長先生との競争や、柿の実の首飾り、竹馬、タンポポびな、カラスノエンドウの草笛、目はじきと素朴な遊びがいっぱいでてきます。

『まわれぶんぶんごま』

江沢洋文 岩波書店

最も簡単なこまの作り方から始まり、厚紙やお菓子で作るこまへと進みます。更に、色の塗り分けや、折り紙を貼るなどして、こまを回転させた場合の色の変化の面白さへと、興味はつきることがありません。文章は簡潔で、写真を見ただけでも充分理解できます。

『かこさとしあそびの本 全5巻』

かこさとし文・絵 童心社

主に、日本の伝統的な遊びが生かされている、遊びの百科絵本的なものです。家の中での遊びから、戸外の遊び、自然や地域性を活かした遊び、創造性を要求される遊びなど、全部で573種の遊びが紹介されています。大人にとっては、昔懐かしい遊びばかりですが、子どもには新鮮なものに写るかもしれません。特に、異年齢の集団で、遊ぶことの少なくなっている子どもたちには、自然にルールや責任感を知ることができる外遊びなどは、是非、経験させてあげたいものだと思います。

このページの先頭へ


美術書の豪華本あれこれ その2(昭和58年6月20日号掲載)

『李朝の民画 2冊』

講談社

本書は、李朝時代(1392~1910年)に民家の装飾画、実用画として屏風や障壁に描かれた民画の図版集です。収録されている民画は、すべて永い間家宝のごとく大切にされていたため、最高峰の作品が多く、強烈な赤、青、紫の大輪の花、迫力に満ちた虎の絵など図版ひとつひとつが見る人を楽しませてくれます。なお本書は上巻(花鳥、風俗、魚、長生、日月図編)、下巻(虎、龍、狩猟、山水文房、文字編)からなっています。

『画集横山操』

集英社

日本画壇の風雲児といわれ、53歳の若さで死亡した横山操画伯の画業の集大成です。複雑な生い立ちの中でも幼いころから天性の才能を発揮し、戦争によって10年間創作を中断されるということがあったにもかかわらず、戦後ダイナミックな『炎々楼島』をもって登場し画壇の注目を浴びました。そしてその後亡くなる直前まで意欲的な創作に取り組みました。本書は抑留体験をもとにした『カラガンダの印象』(1951年)から『絶筆』(1973年)までの主要作品を原色図版で収めています。他に「横山操の世界」と題して一文が寄せられています。全体を通し日本画家横山操の線の太いたくましい特異な画風を感じることができるようです。

『オキーフ画集』

オキーフ画 松岡和子訳 小学館

女流画家ジョージア・オキーフは、すでに伝説化された写真家、スキィーグリッツの妻であり、彼の死後ニューメキシコの田舎に住み約40年間前衛画家のレールに乗らず、自分流に絵を描き続けてきました。本書は、そのオキーフのユニークな作品108点に彼女の解説を加え紹介した、日本ではじめて刊行された限定出版の画集です。

『速水御舟 作品と素描』

速水御舟著 河北倫明編 光村図書

明治末期から大正期にかけて活躍した日本画家速水御舟(はやみぎょしゅう)の画集です。本書は大正10年の『菊花図』関係のものから、昭和10年晩年の『親子牛』に至るまでの各時代の多様な作品がテーマ別に収められており、御舟芸術のさまざまな局面を興味深くうかがうことができます。42歳という短い生涯を終えましたが、近代日本画創造のうえに意欲的な表現を求め続け、すぐれた作品を数多く残しています。

このページの先頭へ


昔話・・・その1(昭和58年5月20日号掲載)

昔話のテーマは、普遍的、根源的で、その表現は単純で様式化されていたり、繰り返しが多かったりで、幼い子どもでも、容易に理解できるものをもっています。また昔話は、子どもの精神が成長するための試練の原型が、そこに内在されているということもいわれます。図書館のお話会では、昔話をよく子どもたちに語っています。語られることにより、その世界が一層生き生きと伝わるようです。今回から何回かに分けて語るにも適した昔話の本を紹介していきます。

『日本昔話百選』

稲田浩二、稲田和子編著 三省堂

全国各地の昔話を原話に忠実に、方言も取り入れて採録してあります。「桃の子太郎」「舌切雀」などのよく知られた話も数多く入っています。会話は、生きのよい語り調で、昔話特有の繰り返しを多くとどめています。

『イギリスとアイルランドの昔話』

石井桃子編・訳 福音館書店

「三びきの子ぶた」「ジャックとマメの木」など有名な話のほか、ちょっと変わった雰囲気のある話や趣のあるものなど30編が入っています。再話、翻訳ともすぐれたものです。

『いばら姫 グリム童話選I』

相良守峯訳 岩波書店

グリムは、ドイツの民間童話を聞き集め、それを集大成しました。そして、これらは物語として興味が深いだけでなく、民間に養われている人情や、道徳を自然の形で表しているし、また想像力を養う要素として欠くことのできないものだといってます。この本と続編の「鉄のハンス」は、ドイツ語の原典から忠実に平易な文章で訳され、「オオカミと七ひきの子やぎ」「ヘンゼルとグレーテル」「赤ずきん」「白雪姫」など、グリムの傑作のほとんどがおさめられています。

このページの先頭へ


美術書の豪華本あれこれ(昭和58年4月20日号掲載)

今回は小平市図書館に所蔵されている美術書をいくつか紹介しましょう。

『西域美術 全3巻』

講談社

20世紀はじめに、英国人オーレル・スタイン卿が、中国および西域各地で収集した美術工芸品からなるスタインコレクション(大英博物館蔵)を、原色図版でおさめたものです。シルクロードの地敦煌(とんこう)の絵画類をはじめ、敦煌の染織品やスタイン卿の探検によって得られた、他の地域での貴重な収集品の数々も含まれています。あわせて図版の解説や参考文献が付されています。シルクロードの歴史と美術を伝える本のひとつといえましょう。

『桂離宮』

岡本茂男写真 毎日新聞社

わが国最高の名園といわれ、ドイツ人ブルノー・タウトによって広く外国に紹介されている「桂離宮」の全容を、カラー写真と解説で紹介しています。特に昭和57年3月に完成した桂離宮御殿整備工事後の御殿を中心に、茶室、庭園など、余す所なく桂離宮の調和と優雅の美がおさめられています。

『画集 レンブラント聖書』

レンブラント画 ヒド・フックストラ編著 嘉門安雄監訳 学習研究社

題材の多様さ、ざん新さ、豊かな表現力そして膨大な作品群を持つレンブラントは、17世紀オランダ絵画隆盛時代の巨匠といわれています。本書はレンブラントの新約聖書の世界であり、素描、油彩、エッチングと多様な手法を使っての作品がおさめられており、それぞれに解説が付されています。宗教画家としてのレンブラントの世界を知る1冊といえましょう。

『ベランのパノラマ』

H・C・ベラン著 福田宏年訳 前島郁雄訳 実業之日本社

本書はベランのパノラマ技法によって、美しく描かれたアルプス、ヒマラヤ、富士山などの山々が解説とともにおさめられています。地図の持つ「わかりにくさ」と、写真の持つ「細部の不鮮明さ」を解消し、「第3の表現」といわれる独自のパノラマ技法によって生み出される作品は、美しく、わかりやすく見る人をその地へと誘う魅力を持っているようです。

このページの先頭へ


幼年童話(昭和58年3月20日号掲載)

今回は楽しく読める幼年童話を紹介します。

『くまの子ウーフ』

神沢利子作 井上洋介絵 ポプラ社

くまの子ウーフは、朝食に目玉焼きを食べます。そして、めんどりはたまごをうむからたまごからできていると、友だちのツネタにいうと、ツネタは、「ウーフはおしっこをだすから、おしっこからできているのさ」といわれます。ウーフは、自分は何でできているのか考え始めます。幼児の自己認識へ目覚めていく成長の過程がよく描かれています。このほかに、それぞれが子どもの本質をとらえた短編が8話入っています。

『いやいやえん』

中川季枝子作 大村百合子絵 福音館書店

ちゅーりっぷ保育園のいたずらっ子、しげるを中心とした物語です。園児たちの日常生活の中に幼児特有の空想をふくらませた遊びや、幼児の心理が生き生きと表現されています。1962年に出版されて以来、幼年童話の傑作として親しまれています。

『このつぎなあに』

山中恒作 栗田八重子絵 あかね書房

一人息子がまちへ働きに行ってしまって、おじいさんがひとりで家に取り残されてしまいました。おじいさんが寂しくて死んでしまいたいと思っていると、たぬきが大入道や大蛇に化けて、おじいさんを慰めにきてくれます。このつぎは何に化けてくるだろうという期待と、あまり化け方のうまくないたぬきと、それを待つおじいさんとの交流が暖かく描かれています。

『おばあさんのひこうき』

佐藤さとる作 村上勉絵 小峰書店

編み物の名人のおばあさんが、ちょうの模様を編み込んでいると、その毛糸が舞い上がってしまいます。それでおばあさんは飛行機をつくり、孫のタツオの所まで飛んで行きます。奇抜な発想ながら、いつしか自然にストーリーの中に入ってしまうでしょう。

このページの先頭へ


めずらしい内容の本(昭和58年2月20日号掲載)

今回は小平市図書館所蔵のもので、あまり類書がない比較的めずらしい内容の本をいくつか紹介しましょう。

『全国日本酒ラベル名鑑』

青娥書房

全メーカーの日本酒のラベル約2600枚を収録し解説を加えた、目で見る日本酒の戸籍簿といえるめずらしいものです。本書に目をとおすと、“酒”の味にもそれぞれ個性があるように、ラベル1枚にもまた個性があることがわかります。都道府県別にまとめられたラベル1枚1枚には、その“お酒”の由緒、来歴が載せられており、眺めても楽しいユニークな本になっています。

『歯の歴史館』

山田平太著 新藤恵久著 日本医療文化センター

豊富なカラーグラビアで、日本人と歯とのかかわりの歴史をつづったものです。特に江戸時代の風俗習慣の中で、歯の予防がどのように行われていたかなどを、多くの文献、図版をもとにまとめているのは興味深いところです。その意味で本書は、歯科の専門書というより、歯科の風俗史といえるでしょう。ほかにも明治・大正期のむし歯予防のめずらしいポスターなども数多くおさめられ興味をひかれます。

『街・明治大正昭和 絵葉書にみる日本近代都市の歩み1902~1941全5巻』

都市研究会

戦前からの日本の都市や建物を写した白黒の絵はがきを、北海道から九州までほぼ日本の全域から集め、それぞれに解説をつけたものです。絵はがきは全部で約3千5百枚集められています。現在の街や都市の変貌を見るとき、その変わりようには目をみはるものがあります。それゆえ、昔の面影をとどめるこれら数々の貴重な絵はがき1枚1枚が、一つの史料としての価値を生み出しているようです。現在刊行中で所蔵されているのは、「関東編」です。

このページの先頭へ


資料集・・・その2(昭和58年1月20日号掲載)

今回は小平市図書館所蔵の古代以降のあらゆる文献を収めた資料集をいくつか紹介しましょう。

『群書類従』

名著普及会 続群書類従完成会

江戸後期の盲目の国学者、塙保己一(はなわほきいち)によって編さんされた双書です。正編667冊、続編1185冊におよぶ膨大な文献は、彼が江戸時代以前の国書が数多く散逸しているのを心配し、その収集、復刻に力をつくした成果です。内容は有史以来近世に至るあらゆる貴重な文献を網羅し、法律、政治、経済、教育、道徳、宗教、音楽そのほか各般にわたり収録されています。古書の収集保存と普及に貢献し、後世の学問の発達をうながした点からも、歴史的意義が大きい資料といえます。明治以降活字本が刊行されていますが、図書館所蔵のものはその中の「新校群書類従」(全24冊)と「続群書類従」(全86冊)の復刻版です。

『国史大系新訂増補版』

吉川弘文館

「日本書紀」「続日本紀」「日本後期」などの六国史以下「続徳川実紀」に至る史書、法令、物語など、基本的で信頼度の高い文献を集めた双書です。日本史研究に最も根本的で確実な史料といわれており、旧版は明治30年から37年、新版は昭和39年にそれぞれ刊行されています。図書館所蔵のものは、後者の普及版です。

『日本古典全集』

現代思潮社

関東大震災以後、失われていく文化財への愛惜の風潮の中で、古典書籍の複製事業がおきてきましたが、その中にあって与謝野寛・晶子らによって編さんされた双書が本書です。西欧文化偏重の傾向を打破しようとの意図から、日本文化の姿を伝える語学、文学、歴史、宗教、有職故実などにわたる広範囲の典籍を収めています。全6期267冊の中には「倭名類聚抄」、「伊呂波類抄」、「ぎや・ど・ぺかどる」など、今までの資料集に収められていないものも数多く含まれています。所蔵のものは復刻版です。

このページの先頭へ


読んであげる 幼児から小学1・2年生向けの本(昭和57年12月20日号掲載)

幼児から小学1・2年生ぐらいは、特に母親か父親が、声を出して本を読んであげることが、とても大切です。身近な人に読んでもらった喜びは、本の楽しさとともにいつまでも心に残ることでしょう。

『ゆきのひ』

E・ジャック・キーツ文・絵 木島始訳 偕成社

「ふゆのあるあさ、ピーターはめをさまし、まどのそとをみた。ゆきがよるじゅうふっていたんだどこをみても、ゆきがつもっていた」で始まるこの絵本は、小さな男の子の雪の日の喜びが、一日の遊びを通してさわやかに表現されています。コラージュ(貼り絵)の手法の絵が、一層このストーリーをふくらませています。

『かさじぞう』

瀬田貞二再話 赤羽末吉絵 福音館書店

日本の昔話を絵本にしたものの中でもすぐれた1冊です。貧しいじいさんが、大晦日に笠を売り歩きますが、ひとつも売れずに帰ってきます。帰り道、六地蔵さまが寒かろうと、残った笠と自分の分をかぶせてあげます。すると、あくる元旦の朝、六地蔵さまが「よういさ、よういさ」と、じいさんの家に宝の俵を運んできたのです。扇の中に描かれた墨絵と簡潔な語り口は、この昔話の持ち味をよく伝えています。地味な本なので、大人が読んであげるといいでしょう。

『雪わたり』

宮沢賢治作 堀内誠一画 福音館書店

幼い子どもが、手に取りやすいように絵物語にしてあります。雪の凍った晩に、四郎とかん子の兄妹が、きつねに招かれて、月夜の幻灯会に行く物語です。雪はすっかり凍って大理石よりもかたくなります。「かた雪かんこ、しみ雪しんこ」と、ふたりは小さな雪ぐつをはいて、キックキックと野原を歩くのです。リズミカルな言葉は、そのまま子どもの弾む心を表しているようです。声に出して読むと言葉の響きが一層さわやかです。

このページの先頭へ


資料集・・・・その1(昭和57年11月20日号掲載)

小平市図書館には一般的な図書のほかに、調査、研究に利用できる図書も数多くそろえています。今回はその中から幕末・維新期に関する歴史的な資料を紹介します。

『史談会速記録 全45冊』

史談会編集 原書房

島津、毛利、岩倉などの各家が中心となって、幕末から維新にかけての激動期を体験した古老による実歴談や、旧藩資料を研究した史談などを速記収録した維新研究の文献です。史談会は『国事に関する内外の実績を談話討究し輯編史料と為す』との目的から設立された民間団体で、維新期の困難な状況の中で資料散逸を防ぐ大きな役割を果たしたといわれており、明治25年に第1集が発行されて以来411集まで続きました。図書館所蔵のものは合本製本した複刻版です。

『団々珍聞(まるまるちんぶん)』

本邦書籍

明治10年に創刊され、一般に『団珍』の愛称をもって親しまれている雑誌『於東京絵(おどけえ)団々珍聞』の複刻版です。わが国における最初の本格的な諷刺雑誌として、常に庶民の眼を通して時々の政治、社会、風俗の興亡と変転とを鋭くえぐり出してきた「団々珍聞」は、特徴的な狂画をはじめ戯作小説、社説などをもって多くの人々の支持をえてきました。30年の長きにわたって発行を続けたユニークな雑誌として貴重であり、明治史研究資料の一つとして価値のあるものといえます。

『日本史籍協会叢書 全193巻』

文部省維新史料編纂官により収集、大正4年から昭和6年にかけて刊行されたもので、『合津藩庁記録』『岩倉具視関係文書』など皇族、公卿、諸侯志士、庶民の維新期に活躍した人々の日記、文書、覚書を網羅した史料です。明治維新研究の基本文献として貴重なものといえます。図書館所蔵のものは複刻版です。なお『続日本史籍協会叢書』が続編として刊行されています。

このページの先頭へ


中学生のみなさんへ(昭和57年10月20日号掲載)

中学時代は、大人への階段を一歩踏みだしたところです。けれども先を急ぐより、価値ある子ども時代を大切に心の中に持ってほしいものです。「かって子どもだったことを忘れずにいる大人はいくらもいない」と、サンリテグジュプリも言っているように。

『愛について』

ワジム・フロロフ作 木村浩、新田道雄訳 岩波書店

主人公のサーシャは14歳。彼が田舎での夏休みを終えて帰ってくると、舞台女優である母親は地方公演でいません。妹も叔父の家に預けられている。そんな状況で父親とふたりだけの生活が始まります。やがて母親の長すぎる地方公演の真相がサーシャにもわかるときがきます。大人たちの愛、そして少年にも訪れる青春の迷いとほのかな想い。思春期の少年の大人への不信の中での必死のもがきとあせりが、きめ細かく描き出されています。そのうち、自分の周囲にもすばらしい大人たちが存在することを知り、悩みながらも強く生きていこうと決心するところで、この物語は終わります。きれいごとでないありのままの生活が描かれ、自分なりに考えて生きていこうとする主人公の姿に、読後感はとてもさわやかです。

『トムは真夜中の庭で』

フィリパ・ピアス作 高杉一郎訳 岩波書店

この物語の最終場面、トムとバーソロミューおばあさんとの抱擁はとても感動的で印象深いシーンです。それについて著者のピアスはこういっています。「完全にみとめあったその瞬間に、ハティ(バーソロミューおばあさん)は昔のまま少女としてトムの抱擁を受けるのである。おばあさんは、自分の中に子どもをもっていた。私たちはみんな、自分の中に子どもをもっているのだ」。バーソロミューおばあさんは、自分がもっとしあわせだった少女の頃の夢を見て、その夢の過去の庭園でトムと時間を共有するのです。子ども時代のもつ意味と人間の成長が、ちみつに構成された時間のファンタジーの物語に結晶されています。

このページの先頭へ


美術書の豪華本(昭和57年9月20日号掲載)

美術書の収集に力を入れている小川西町図書館の所蔵図書の中からいくつか紹介します。

『ザ・ヒマラヤ ネパール・ヒマラヤの高峰』

ぎょうせい

日本の写真家、藤田弘基が彼のすべてを賭けて広漠なヒマラヤをモンスーン季、ポストモンスーン季を通じ単独で歩き撮影した写真集です。写真は、巨峰、朝日に映える山、神々の園、ヒマラヤの高山植物、キャラバン、夕映えの山と6つの主題別に131枚が紹介されており、写真を見ただけでヒマラヤの息吹がそのまま感じとれる写真です。

『びいどろ 江戸時代の吹きガラス』

雄山閣出版

“びいどろ”といえば、ガラス工芸、長崎、ポルトガルとすぐ頭に浮かびますが、あの“びいどろ”の色、あの流れるような線のすばらしさをじかに自分の目で見る機会は少ないのではないでしょうか。本書は、医学研究者でありながら古陶磁の収集、研究にも名声のある工藤吉郎が限定出版により、その姿と色の世界一美しい“びいどろ”を実物に近い色で紹介した観賞用図鑑であり、また、“びいどろ”の研究書であります。

『岩橋英遠画集』

朝日新聞社

日本画家、岩橋英遠(えいえん)の作品集です。英遠は、いちはやくシュールレアリスム(超現実主義)の洗礼を受けた作家であり、戦後靭彦門にはいり精妙透徹の画体で日本画の限界にいどみながらあるいは幻想的な、ときに構成的な独特のヴィジョンを求めて進んだ日本画家です。本書は、英遠が描いた数多くの作品の中から、英遠の自選により79点が納められています。

『西洋家具集成』

講談社

古代エジプトやギリシア、ローマから始まって、中世ヨーロッパより現代にいたる西洋家具の変遷を、時代を追ってカラー写真を中心に集成した豪華本です。

このページの先頭へ


小学3・4年生向きの本(昭和57年8月20日号掲載)

小学3・4年生は、学校生活にも慣れ、読書の習慣もつけやすい時期です。今回は、読書に不慣れな子どもでも夢中になれるような、中学生向きの本を何冊か紹介します。

『モグラ原っぱのなかまたち』

吉田足日作 あかね書房

2年生の仲良し4人組は、どこにでもいるような子どもたちです。畑全部のカボチャにへのへのもへじをかいたり、掃除機で虫を採ったり、モグラ原っぱを中心に遊んでいます。4人の子どもたちの個性と行動が、生き生きと描かれ、そこにはほんとうの遊びの姿があるようです。この4人を主人公にした短い話が10編。普段本など読まない子どもでも、気軽に手に取り物語の世界に入っていけるでしょう。

『がんばれヘンリーくん』

クリアリー作 松岡享子訳 学習研究社

毎日がちょっぴり退屈だったヘンリーくんは、ある日、やせてあばら骨が見える犬、アパラーを拾います。その日から、次々愉快な事件が起こります。子どもたちのごく身近な生活が、明るく、生き生きと描かれています。さし絵も楽しく、読書に慣れない子もすんなりと読めます。全8巻のシリーズです。

『長くつ下のピッピ』

リンドグレーン作 大塚勇三訳 岩波書店

ピッピ・ナガクツシタは、世界一強い女の子、馬だって持ち上げてしまいます。9歳で、学校へも行かず、たったひとりで、ゴタゴタ荘に住んでいます。空想やほら話、奇想天外な行動が相次ぎますが、実はそれらは、子どもが一度はやってみたい事ばかり。読者はきっと、ピッピの仕業に共感の拍手を送ることでしょう。続編に、「ピッピ船にのる」「ピッピ南の島へ」があります。

『ちいさいモモちゃん』

松谷みよ子作 講談社

ねこのプーをはじめ、モモちゃんを取り巻くものすべてが暖かくかかわりながら、モモちゃんが生まれた日から3歳までのお話が展開します。小さい子どもの喜び、怒り、やさしさ、自立心や自尊心など、巧みに描かれています。小さいころの話をききたがりやの子どもたちは、ああそうだったとうなずきながら読むことでしょう。「モモちゃんとプー」「モモちゃんとアカネちゃん」「ちいさいアカネちゃん」と、続きがあります。

このページの先頭へ


昆虫の本(昭和57年7月20日号掲載)

夏休みには昆虫を観察したり、標本を作ったりする機会が多いことでしょう。日ごろ身近にいる昆虫でも、意外と知られざる一面を持っていたりするもので、本を読んで新しい発見をするかもしれません。

『アゲハチョウ』

佐藤有恒 本藤昇著 あかね書房

アゲハチョウは、羽を上にあげるのでこの名があります。ごく普通にどこにでもいる蝶ですが、幼虫の生態や天敵は、あまり知られていないのではないでしょうか。本書は、卵から成虫までの生態だけでなく、幼虫の捜し方から育て方まで載っています。最初は気持ち悪いイモ虫も、育てているうちに愛情が湧いてくるものです。

『クサカゲロウ』

千国安之輔編著 主婦と生活社

ときどき電燈のかさや天井についているウドンゲの花を知っていますか。うす緑色のすきとおった羽でヒラヒラと飛ぶ、クサカゲロウの卵です。親は優しそうでも、子は親とは似ても似つかない姿をしています。本書は、ちょっと注意して探せば、どこにでもいるクサカゲロウの一生を興味深く解説しています。夏休みに、親子で観察してみませんか。

『ホタルの歌』

原田一美著 学習研究社

徳島県の山村にある、小さい小学校での感動の記録です。この物語の舞台になった美郷村は、「ホタルの村」として国の文化庁から天然記念物保護地区の指定を受けました。しかし、それまでの道程は長かったのです。村のホタルのすばらしさに感動した著者は、クラスの子どもらとホタル研究クラブを作ります。そして、ホタルのナゾを次々に解き明かしていきます。本書はホタルの観察を通した、子どもたちの成長の記録ともいえます。

『生きものの飼い方』

旺文社学習図鑑 林壽郎監修 旺文社

昆虫を中心に、小鳥・魚貝類・小動物のなかまなど、多数の生きものの飼い方が載っています。生きものの上手な飼い方は、その生物にとって好ましい自然環境を人工的に作ってあげることと相手を知ることです。本書は、豊富なイラストと写真で飼い方はもちろん、採集のしかた・一生・特徴・なかまなどを分かりやすく説明しています。付録のページには、観察記録のとり方・まとめ方、自由研究のしかたもあり、夏休みの宿題にも役立つでしょう。

このページの先頭へ


美術書の豪華本(昭和57年6月20日号掲載)

今回は、美術書の収集に力を入れている小川西町図書館の所蔵図書の中からいくつかを紹介しましょう。

『東郷青児画集』

東郷青児著 講談社

生前から没後に至るまで日本現代絵画のあゆみの中で幅広い人気を集めてきた。東郷青児の1914年から1978年に至るまでの作品をおさめたものです。幻想的な美しい女性像を描きつづけ独自の画風をつくりあげたが、本書にはそれらの作品のほかに、初期作品「パラソルさせる女」「ピエロ」やシュールレアリズム(超現実)風の作品などが、カラー・モノクロの図版でおさめられています。ほかに業績・年譜・文献目録がそえられ画伯の作風理解の一助にもなっています。

『本郷新彫刻集』

本郷新著 求龍堂

彫刻家の本郷新(しん)の作品集です。ロダンなどの影響を受ける中で彫刻家としての制作をはじめ、1940年代よりモニュメンタルな彫刻理念に基づく現代彫刻を志向し、「わだつみのこえ」「石川啄木像」「氷雪の門」などにみられる社会性に裏打ちされた作品をつぎつぎ発表しています。本書ではこれらの作品も含め、全作品をカラー及びモノクロ図版でおさめています。

『陶芸 唐九郎』

加藤唐九郎著 毎日新聞社

陶芸作家として独特の作風を展開し精力的に作陶に取り組んでいる加藤唐九郎の作品集であり、作陶の記録でもあります。50年以上におよぶ作陶生活の中から、陶壁・花瓶・茶碗など代表的な105の作品をカラー図版でおさめています。ほかに加藤唐九郎の世界を知るうえで必要と思われる伝記・年譜・作品目録がそえられています。

『幻想のアメリカ西部』

アンセル・アダムス著 集英社

20世紀の巨匠の一人アンセル・アダムスの自選作品集です。「写真は創るもので、撮るものではない」という言葉の中に、50年にわたって写真芸術を追究し続けた彼の主張があります。アダムスが重点をおいたのは「自然」ではあったが、それと同時にあらゆるモチーフに取り組み写真化してきました。標題が示すとおり舞台はアメリカの西部。そしてその中で岩や湖や山などの自然と人物が、モノクロ写真117枚の中で見事な幻想の世界を展開しています。

このページの先頭へ


日本の絵本(昭和57年5月20日号掲載)

今回は、日本の絵本を紹介します。

『かばくん』

岸田衿子作 中谷千代子絵 福音館書店

かめのこを連れた男の子が、かばにえさをやりにくる朝の場面から動物園の一日が始まります。動物園の朝はもえ黄色、かばが眠っている夜の場面では青と場面ごとの色使いが美しく、かばの表情もユーモラスで暖かくえが描かれています。文章はリズミカルで、読み聞かせにも適しています。外国でも出版されている日本の代表的絵本です。

『かにむかし』

木下順二文 清水昆絵 岩波書店

1959年に「岩波の子供の本」の1冊として出版されて以来、読み継がれている本です。1976年には、大型本にもなりました。著者独特の方言や擬音を取り入れた語り口が、快いリズムと民話のもつ素朴さを感じさせます。清水昆の墨を使った絵も、この民話の持ち味を最大限に生かしています。

『わたしのワンピース』

にしまきかやこ文・絵 こぐま社

真白なきれが空から落ちてきて、それを拾ったうさぎは、ワンピースをつくります。花畑を散歩すると、ワンピースは花模様に、雨が降ってくると、水玉模様になります。快い言葉の調子と、子どもが描いた様な絵で、ごく幼い子でも楽しむことができます。子どもたちに読んであげると、歓声のあがる本の1冊です。

『しょうぼうじどうしゃじぶた』

渡辺茂男作 山本忠敬絵 福音館書店

あるまちの消防署には、はしご車と高圧車と救急車と、ジープを改造した消防自動車のじぶたがいます。じぶたのほかの3台は、火事があれば大活躍する自分を自慢し、じぶたのことはばかにしています。けれどもある日山火事が起こります。山道でも登れるじぶたの活躍です。乗り物絵本に物語性を持たせた画期的絵本として、1963年に出版されて以来、じぶたは、子どもたちの仲間として愛され続けています。

このページの先頭へ


中学、高校生のみなさんへ紹介する本(昭和57年4月20日号掲載)

4月は入学をした人、進級した人たちが新しい学校・クラスで期待に胸をふくらませていることでしょう。今回は日ごろ紹介する機会の少ない青少年むけの本をとりあげて見ました。

『失敗の科学史』

筑波常治編 日本放送出版協会

「科学の発展する途中では、多くの失敗があったろう。だが失敗はしょせん失敗にすぎず、何の役にもたたなかった。さいわいにもヘマをやる人間だけでなく、まちがわずに答を出す人がいたから科学はすすむことができたのではないか」と考える人が多いかもしれません。が、はたしてそうでしょうか。じっさいの科学の進歩はまっすぐではありませんでした。失敗に失敗をかさねジグザグとまわり道しながら、あとからみると一定の方向へ着実にすすんでいたというのが科学の歴史です。本書には失敗を通じて成功への道がひらかれたという多くの実例がおさめられています。失敗物語こそ偉大な発見をなしとげるのに必要であるということを教えてくれる1冊です。

『夢を掘りあてた人』

ヴィーゼ作 大塚勇三訳 岩波書店

この本は神話のかなたにかすむ古代のギリシャ世界にあこがれ、ついにはトロイアの発掘をしたシュリーマンの物語です。シュリーマンは幼い日父親からきいたトロイア戦争の話が忘れられず、発掘を決心します。その後貧しい牧師の息子であったシュリーマンは、商人の道に入りすぐれた商才とあらゆる語学をマスターするという才能を生かし、商人として成功します。そしてそのたくわえた財力をおしみなくトロイア発掘に注ぎこみ、幼い日の夢を掘りあて考古学の先駆者となりました。シュリーマンの何にもたじろがない姿勢と情熱がつたわる本です。

『生きることの意味』

高史明著 筑摩書房

在日朝鮮人の子供として生まれた著者の自伝です。幼い日に母と死別し、曲ったことのきらいな頑固な父親、勉強が好きだったが小学校だけで働かねばならない兄の二人に見守られながら成長します。そして周囲の無理解の中で坂井先生との出会いにより人間のやさしさ大切さを知り、それにより恐い父親の姿の後にやさしさが隠されていたことに気がつきます。人間の生きることの尊さ、すばらしさを教えてくれる本として、若い読者におすすめします。

このページの先頭へ


児童書(昭和57年3月20日号掲載)

春休みも間近です。夜は親子で読書を楽しみませんか。長い年月読み継がれてきた児童書は、おとなでも充分楽しめます。心の若がえりのためにも空想の世界へ羽ばたいてみませんか。

『たのしい川べ・・・ヒキガエルの冒険』

ケネス・グレーアム作 石井桃子訳 岩波書店

春になると思い浮かぶのが、この本の最初の春の訪れの場面です。それはこんなふうに描かれています。「春は、地上の空気中にも、またモグラのまわりの土のなかにも動きだしていました。そしていまでは、暗くみすぼらしいモグラの家の中まではいりこんで、なんとのいえないそわそわした、じっとしていられない気持ちで、そこらじゅうをいっぱいにしてしまったのです」。四季おりおりの自然を背景に、モグラやネズミなどの小動物が主人公になった物語です。読者は、あたかも自分がその静かな自然に身を置いたかのように、気持ちまでもがゆったりしてくるのを感じるでしょう。おとなが子どもに読んであげるのにも適した本です(小学5・6年から)。

『ライオンと魔女』

C・S・ルイス作 瀬田貞二訳 岩波書店

田舎へ疎開した4人のきょうだいが、衣装だんすを通ってナルニア国に入ります。そこは、白い魔女に支配されていて、永遠に冬が続いていました。4人のこどもたちは、偉大なライオン、アスランと共に魔女と戦います。この本は、「ナルニア国ものがたり」の第1冊目で、続いて、「カスピアン王子のつのぶえ」「朝びらき丸東の海へ」「銀のいす」「馬と少年」「魔術師のおい」「さいごの戦い」の7冊から成っています。そして1冊1冊が独立した物語であるばかりでなく、7冊を通して大きな川の流れのような長編の空想物語となっています。全巻を通して人間の中にある善と悪との戦いを象徴的に描いていますが、物語はただひたすら楽しく劇的です。読者はこの壮大な物語に一歩入り込んでしまうと、たちまちナルニアの魅力にとらえられてしまうでしょう(小学4・5年から)。

このページの先頭へ


豪華本の紹介3(昭和57年2月20日号掲載)

『納札と千社札』

関岡扇令編 岩崎美術社

江戸時代、観音信仰本来の納札が江戸庶民の粋(いき)な遊楽の中に溶け込んで、美術的に開花した題名納札に展開し、それが千社札として流行したといわれています。またそれは同時に江戸庶民の心をも生き生きと映し出しています。本書は著者所蔵の中より150点を選び、多色刷で全点すべて原寸大に復刻し再現したものです。

『山口長男作品集』

山口長男著 講談社

現在独自の画風をつくり抽象絵画の先駆的な画家として著名な山口長男画伯の作品集です。「風景」「自画像」などの初期作品から、風景を線や色面に抽象化した「庭」連作あるいは「作品(かたち)」など画伯の代表作がカラー・モノクロ写真でおさめられています。ほかに対談「絵を描くということ」などが載せられており、画伯の画風を知る手がかりともなります。

『世界古地図』

チャールズ・ブリッカー著 ロナルド V.トゥーリー地図選択 矢守一彦訳 日本ブリタニカ

豊富に盛り込まれた図版 地図の覆製、探検家や地図作成者のポートレート、風俗のスケッチなど をもとに地図作成の技術史を概観し、ヨーロッパ・アジア・アフリカ・アメリカ・オーストラリアとそれぞれの探検と地図の作成を年代を追ってまとめています。そしてこのページの間からは、古地図の楽しさ、また古今の多くの人々が古地図に魅せられた心情が伝わってくるようです。

『画集荻須高徳』

講談社

在仏の画家であり、フランス画壇にも知られている荻須画伯の画業をまとめたものです。画伯の作品は洗練された画技の中にどこか東洋的な静かな詩情をただよわせており、風景画が多くあります。本書では127点の作品を年代順にカラー図版でおさめ、ほかに年譜・画歴などがそえられています。

『大和路有情』

入江泰吉著 保育社

写真家入江泰吉氏が、奈良大和のたたずまいを四季ごとにその季節の風景・寺院などをカラー約130枚におさめた写真集です。ほかに大和の歴史と風土についての随筆が寄せられています。

このページの先頭へ


クリスマスの絵本・物語(昭和56年12月20日号掲載)

クリスマスの絵本や物語を読むと、そこにはささやかな喜びが満ちていて、なぜか心が温かくなるのです。そんな本の中から何冊か紹介します。

『サンタクロースっているんでしょうか?』

中村妙子訳 偕成社

この本は80年前に、8歳の少女の質問に答えた、ニューヨーク・サン新聞の社説を訳したものです。 サンタクロースがいるというのはけっしてうそではありません。この世の中に、愛や人への思いやりやまごころがあるのとおなじように、サンタクロースもたしかにいるのです。愛情あふれるこの記事は、現代の私たちにも、忘れかけている何かを気づかせてくれるでしょう。

『さむがりやのサンタ』

レイモンド・ブリッグズ作絵 すがはらひろくに訳 福音館書店

「やれやれ、またクリスマスか!」などという、寒たがりやでちょっと気むずかしいサンタの話です。コマ割りで細かく描かれた絵はとても楽しく、ブツブツ文句を言いながらプレゼントを配る姿はユーモラスで、人間的な親しみを覚えます。

『セシのポサダの日』

エッツ&ラバスティダ作 田辺五十鈴訳 冨山房

メキシコを舞台にしたクリスマスの物語です。ポサダというのはクリスマスの9日前に行なわれるパーティです。幼い女の子セシも、ことしはポサダをしてもらえることになりました。幼いセシの心のときめきや不安が雰囲気をたたえた江から伝わってきます。

『子うさぎましろのお話』

ささきたづ文 よみしせきや絵 ポプラ社

白うさぎの子ましろは、サンタクロースのおじいさんからまっさきに贈り物をもらったのにまた欲しくなり、体にすすを塗って黒くなりおじいさんをだまそうとします。おじいさんはましろと承知で種をくれます。けれどもすすがとれなくなったなしろは、後悔して種を土に埋めて神さまにお返しすると、やがて大きなもみのきとなり、クリスマスには贈り物がなり、枝々についた金や銀のベルからは、うつくしい音がひびきわたるのでした。

このページの先頭へ


豪華本の紹介2(昭和56年11月20日号掲載)

前回にひきつづき小平市図書館に所蔵されている何点かの豪華本を紹介します。

『自選 安田靫彦画集』

安田靫彦著 朝日新聞社

日本画家安田靫彦(ゆきひこ)画伯の画業をまとめたもので、代表作「守屋大連」「飛鳥の春の額田王」など97点におよぶ作品がおさめられています。画伯は、中国と日本の神話・伝承などをモチーフにして、格調高い明快なイメージを画面に定着させ、新古典主義的作風をつくりあげ、近代日本画運動をより高めたともいわれています。ほかに解説と年譜がつけられています。

『地の貌』『生の貌』

濱谷浩著 岩波書店

写真家濱谷浩のこれまでの作品を精選して「地の貌(かお)・生の貌」の2冊におさめています。山間村落の農耕儀礼を写した「雪国」以来風土と人間のかかわりを追究してきた<眼>が、本書では人間の存在を拒否するかのような自然の諸相を航海カラー写真におさめ、また世界各地の都会と村、砂漠にくりひろげられる人間の営みをモノクロ写真によっておさめています。

『萬葉大和路』

入江泰吉撮影 保育社

20年以上にわたって奈良・大和の風景・仏像写真を撮りつづけてきた著者による、萬葉集にうたわれた大和の自然風物をモチーフにした写真集です。形を具えた古寺風物などの対象とは異なり、萬葉びとの生活感情が表現された詩心の世界である萬葉秀歌を、作者はレンズという科学の目をもってあらわすというこころみをしています。“大和三山”“飛鳥”など約130枚のカラー写真で構成され、各章にはそれぞれ解説がつけられています。

『日本の紙 全2冊』

毎日新聞社

7世紀のはじめ、中国から伝わった製紙の技術は私たちの祖先の努力と研究で、世界に誇ることのできる丈夫で美しい紙 和紙を生み出しました。いま和紙が滅びようとしている中で、本書が刊行される意味は深いものがあります。豊富な日本の紙の全容を解説編と標本編にわけ、その中から日本の生活文化をささえてきた和紙の歩みをあきらかにし、精選した150点の標本紙から和紙そのものの概要を知る事ができるように構成されています。日本の伝統工芸を伝える貴重な資料といえましょう。

このページの先頭へ


豪華本の紹介1(昭和56年9月20日号掲載)

市内の図書館参考室(コーナ)には事典・年鑑などの参考図書のほかに、豪華本といわれる貴重な図書が所蔵されています。「個人ではなかなか高くて・・・」とお思いの人などは、ぜひご利用ください。そこで今回、小平市図書館にある何点かの豪華本を紹介します。

『印度更紗』

吉岡常雄解説 京都書院

桃山時代、日本に伝えられたといわれている更紗(さらさ)の中でも、特に古くから親しまれているインド更紗についてまとめたものが本書です。金泥で描き、漆(うるし)などを用いて金銀粉をかけた金更紗・金華布とよばれる華麗なものなど特色のある更紗を中心に、インド更紗の魅力やその技法についてまとめています。あわせて豊富なカラー写真がそえられています。

『琳派絵画全集 全5巻』

山根有三編 日本経済新聞社

江戸期に栄えた装飾画流派としての琳派(りんぱ) 宗達・光琳派 の日本絵画史上に占める位置と特色を、伝統と創造の両面からさぐっているのが本書の特徴といえます。全5巻が宗達派・光琳派・抱一派で構成され、有名な「風神雷神屏風」(宗達)・「紅白梅図屏風」(光琳)など絵画史上にのこる作をはじめとして、多数が原色の図版でおさめられています。「琳派」集大成の書といえます。

『石本正自選画集』

石本正著 集英社

つねに女性を描きながら、特異な感触をもちきわめて写実的な画面をつくりあげ、新しい日本画の一つの方向を打ち出した石本正(しょう)の作品集です。「五条坂」・「踊子」などの初期作品から、「舞妓」連作「M嬢」にいたる約50点が年代順におさめられており、作者の画風の変遷も、その中からくみとる事ができるように考慮されています。

『奈良六大寺大観 全14巻』

奈良六大寺大観刊行会編 岩波書店

法隆寺・薬師寺・興福寺・東大寺・唐紹提寺・西大寺という奈良の名刹六大寺に伝わる建築・彫刻・書画・工芸など至宝の数々を、多くの原色写真・モノクロ写真によってまとめたものです。ほかに今までの研究成果を網らした解説がついており、奈良古代仏教美術の集大成されたものといえます。

このページの先頭へ


夏休みに贈る 下(昭和56年8月20日号掲載)

『エルマーのぼうけん』

ルース・ガネット作 渡辺茂男訳 福音館書店

エルマー少年は年取ったのら猫から、どうぶつ島に捕らえられているかわいそうなりゅうの話を聞き、助けに行くことにします。エルマーはリュックの中に、チューインガムやキャンディ、輪ゴムや虫めがねなどいろいろなものをつめ込みます。それらがこの冒険で思いもかけないときにエルマーの危機を救ってくれるのです。ひとり読みをはじめた子どもたちを空想の世界に導き、冒険心を満たしてくれるでしょう。幼児には、母親が少しずつ読んであげても喜ばれるでしょう。続きに、「エルマーとりゅう」「エルマーと16ぴきのりゅう」があります(小学1・2年から)。

『龍の子太郎』

松谷みよ子作 講談社

信州に伝わる小泉小太郎の伝説から再創造した民話風の物語です。龍の子太郎は、村のおきてを破って3匹のいわなを食べたために龍に変えられてしまった母をたずねに行きます。そして、龍の母と力を合わせて山をくずして、ひろい土地を切りひらくのです。雄大で力強い物語が、民話風の語り口で表現され、味わい深い作品となっています。(小学2・3年から)

『ドリトル先生航海記』

ヒュー・ロフティング作 井伏鱒二訳 岩波書店

この物語は、ドリトル先生の助手になったトミー少年の回想という形式で描かれています。沼のほとりのパドルビーに住んでいるドリトル先生は動物語が話せます。そして先生は、偉大な博物学者ロング・アゴ を捜しにクモサル島探検の旅に出ます。奇想天外な発想と面白い筋立て、ユーモラスなドリトル先生と生き生きとした動物たちとの交流が暖かく描かれています。全12巻のシリーズです。(小学3・4年生から)

『木かげの家の小人たち』

いぬいとみこ作 福音館書店

小人の登場する本格的ファンタジーの作品です。イギリスから来た小人と彼らを託された森山家が、戦争を背景にその時代をいかに生きていったかが語られています。静かな物語の中に反戦の意志が込められています。(小学5・6年生から)

このページの先頭へ


夏休みに贈る 上(昭和56年7月20日号掲載)

今回と次回は、夏休み中の子どもたちが楽しく読め、また読みごたえのある本を何冊か紹介します。

『ちびっこカムのぼうけん』

神沢利子作 理論社

ちびっこカムは、病気のかあさんのためにイノチノクサを取りに出かけます。しかしそれには、大男ガムリイの指輪が必要です。カムは銀河の水をたたえた北斗のヒシャクから火の山に水を注ぎ、ガムリイと勇敢に対決するのです。全編に流れているのは、カムの父母への愛や、動物たちに寄せる心の優しさです。それが北国の自然を背景にした、壮大なスケールロマンと冒険の世界となって展開されています。(小学2・3年生から)

『だれも知らない小さな国』

佐藤さとる作 講談社

ぼくは決心した。心のかたすみにおしつけられていた思い出が、音を立ててはじけるような気がした。ぼくと小山の小さな歴史はふたたび流れはじめた。…この小山を通して自分の夢を追い続けてきた主人公とコロボックルとの出会い、そして彼らに信頼されていく姿が描かれています。この作品は、本格的な日本のファンタジーとして、出版されてから20年を経た今なお、たくさんの子どもたちに愛され読み継がれています。(小学4・5年生から)

『ふたりのロッテ』

エーリッヒ・ケストナー作 高橋健二訳 岩波書店

両親の離婚によって離ればなれに育ったふたごのルイーゼとロッテが夏のキャンプ場で偶然に出会います。ふたりは陰謀をめぐらし、それぞれが入れ替わって親元に戻ります。そしてさまざまな事件ののち両親を和解させます。機知とユーモアに富んだ作品です。(小学3・4年生から)

『ツバメ号の伝書バト』

アーサー・ランサム作 新宮輝夫訳 岩波書店

アーサー・ランサム全集12巻の中の1冊です。各巻独立した作品で、登場人物もほぼ共通し、それぞれが個性的で生き生きと描かれている休暇中の冒険物語です。この作品は子どもたちが金鉱探しをしていると謎の男「つぶれソフト」に出会います。この男の出現によって、スリルとサスペンスをはらんだ物語へと発展していきます。本は相当厚いのですが、一度読み始めた子どもたちは、シリーズを次々に読破していくでしょう。(小学5・6年から)

このページの先頭へ


複刻本1(昭和56年4月20日号掲載)

今月から月1回の予定で、小平市の図書館に蔵書されている文学・歴史・児童・趣味などいろいろな本を紹介していきます。今回は、絵本や童話の複刻本を紹介します。図書館は現在、3館と4分室ありますので、趣味や教養に、また各種の研究などにお近くの図書館をご利用ください。

『名著複刻日本児童文学館』

明治・大正・昭和の時代をとおして、子どもたちの知性や夢・勇気を育ててきたすぐれた児童図書を選んで複刻したものです。児童文学の黎明記である明治中期から昭和期にいたる作品32点がおさめられています。童話はもちろん、童謡・児童劇などすべてのジャンルにわたっており、小川未明・宮沢賢治・新見南吉・浜田広介などの童話作家のほか、島崎藤村・有島武郎・芥川龍之介などの作家の童話も含まれています。「蜘蛛(くも)の糸」・「一房の葡萄」・「風の又三郎」・「おじいさんのランプ」などのように、現在でも年代を超えて読みつがれているものも数多く見ることができます。

『赤い鳥 複刻版』

大正7年、鈴木三重吉がそれまでの日本の児童読物にあきたらず、藤村・龍之介・北原白秋・西条八十ら文壇の一流作家や詩人たちの協力のもとに、児童文学・芸術の広い領域にわたっていくつもの名作をかかげて発刊されたのが児童文芸雑誌「赤い鳥」です。「赤い鳥」運動は、全国に広がりその後の教育文化に大きな影響を与えたといわれており、その歴史は大正7年7月の創刊から三重吉の死によって終刊となった昭和11年10月まで、前後期あわせて実に196号におよんでいます。「複刻版」では刊行された「赤い鳥」を全て原本どおりに再現しており、当館所蔵のものは合本製本されています。

『複刻世界の絵本館 オズボーン・コレクション』

世界的な絵本のコレクションとして有名なオズボーン・コレクションの中から、絵本の発祥ともいわれる18世紀から19世紀にかけて出版された古典的な絵本を選び、内容はもとより版型や装幀にいたるまで忠実に当時のまま再現複刻したものです。全部で34点ありますが、グリーナウエイ、カルデコットなど絵本を語るうえ欠くことのできない作家の詩情豊かな作品をはじめ、日本の双六にも似たテーブルゲームや仕掛絵本などのめずらしいものも含まれており貴重なコレクションといえます。